兵庫県議会★漫遊記
第1話 前代未聞の副議長選挙
【第1回】
私は名前を呼ばれ、ゆっくりと立ち上がり議長席の前に進んだ。
私の後ろからはN氏が投票札をもって歩いているはずだが、私には賛成票か反対票かは見えない。
緊張でじっとりと汗をかいた手で投票札を係員に渡して私が投票を済ませ、続いてN氏。
その瞬間、県議会の本会議場はいままでの静寂を打ち破り、怒号に包まれた。
与党からは「よっしゃー!」「よくやった!」
野党からは「おいおい!」「ふざけるな!」「裏切者!」
直前に議長席の前で投票を済ませた私には、そのざわめきで何が起こったのか理解できた。
「この男、有権者を裏切ったな」
そして85名の投票が終わり議場は時が止まったかのような静けさを取り戻した。
議長の「投票終了」の声が響き、議員全員の視線が投票箱にくぎ付けになった。
「ゴクっ・・」まるで自分が唾をのむ音が全員に聞こえてしまうのではないかという静寂と張りつめた空気。
勢力図からいって1票が賛成にまわるか、反対にまわるかで結果が変わる・・・
当局の担当者が議場正面の議長席の前で「投票の結果は・・・」と静寂を打ち破った。
(つづく)
※この物語は事実を基にしていますが実在の人物とは関係ありません、また一部脚色が含まれます。