愚者の贈り物
賢者の贈り物というお話がある。
時計の鎖を買うために髪を売った女に、時計を売って髪飾りを買ってやるという、お互いのコミュニケーションが完全に破綻した生活を続けながら、相手を喜ばそうというよりもむしろ驚かそうという底意地の悪い人間の本性を残酷なまでに見せつけられる救い難いお話で、当然、作中の人物も、読者も幸せにはなれず、暗澹たる気持ちにさせられる。
誰が、賢いのか
贈り物をする人は贈られる者の気持ちなど考えてはいけないし、また、人から施しを受けるようになってはお終いという教訓であり、それを知っている者こそ賢者と呼ばれるに相応しい、言い方を変えれば社会的強者ということだろう。
-力なき正義は無力なり- 梶原一騎
アルベルト・デル・リオというレスラーがいる。今は悪役のポジションにおり、ライバルである善玉レスラーの覆面を剥がそうとしたりする。元々、彼は超人気覆面レスラーの息子で、自身も以前は覆面を着けていた。素顔になったら豹変した。
まぁ、彼は所属団体の意向で演じているだけなのだが、この団体は人間の根源的欲求のディフォルメを試合以外の部分でも表現しファンを拡大してきた歴史がある。
彼は数年のうちに善玉のトップに立つ、と見ている。
藤枝梅安の本職はどちらであろうか、金で仕事を請け負う暗殺者か、近所にも評判のいい鍼師か、いずれにせよ、善人であるという仮面を必要とした。
-人は善いことをしながら、悪いこともする- 池波正太郎
これは、大人物は清濁併せ持つ、といった意味なのだろうが、俺は間違って捉えてしまい、
悪意だけが育ってしまった