コンタクトを取っているつもりだった。
『6つの腹筋(シックス・パック)』には、
ひとつも自分の声は届いていなかった。
脂肪に作戦は傍受され、
妨害電波によって、遮断されていた。
気付いたときには、
身体は傷つき、
休戦を余儀なくされてしまったのだ。
■叩き込まれた腹筋運動
学生の頃、二人一組になり、
腹筋運動をやらされた。
仰向けになり、
膝を90°に曲げ、
両手は首の後ろに回す。
一人が足首を固定し、
背筋を伸ばしたまま、
上体を起こす。
回数を重ねるにつれ、
頭を上げようと手には力が入り、
必要以上に顎が引かれた状態に。
終わった後に感じる、
首への違和感。
あの頃はわからなかった。
『6つの腹筋(シックス・パック)』への
間違ったコンタクト方法だと。
■間違いだらけの腹筋運動
足が動かぬよう、
一生懸命固定していた。
それが正しいと信じていた。
しかし、違っていた。
足を固定し、背筋を伸ばしたまま
上体を起こしたとき、
腹筋は使われない。
固定された足を使って
上体を起こしているのだ。
鍛えられているのは、
太腿の表の筋肉。
『6つの腹筋(シックス・パック)』ではない。
学生の頃に何度も何度も
コンタクトを取ったにもかかわらず、
彼らとの面会が叶わなかったのは、
声が届いていなかったからなのだ。