おはようございます。
カーペンターの小西です。
今日もCRFブランク工場で皆と頑張ってブランク作りを行っています。
長文ですが、ぜひ読んでみてください。
◼️ものづくりと心
先日、ゆかりの地を訪れた、岡潔先生の生涯は『世間とは逆行する生き方』でした。現代が速さと効率を求めて突き進む中で、先生は静けさと内省の中に真理を見出そうとしました。
数学という抽象の極みにいながら、常に「人の心」こそが中心にあると語り続けました。
「情緒が分からなければ、数学も分からない」と言い切った言葉は、今も強い余韻を残しています。
便利さや情報の洪水の中で、心の静けさを失いかけている現代人にとって、岡先生の思想は、立ち止まる勇気を思い出させてくれる灯のように感じました。
現代のものづくりは、効率を追い求め、速く、安く、そして大量に作ることを目指しています。
それは確かに「ものづくりの一つの形」ではありますが、そこには“心”が置き去りになってしまう瞬間があります。
なぜ作るのか。
誰のために作るのか。
その根を失えば、どんなに形が整っても、本当に良いものにはならないと考えます。
“心”と“情”を軸にしたものづくりは、今の時代では逆行かもしれません。けれど、私たちはそれを誇りにしています。なぜなら、そこにこそ“人の心に届く竿”があるからです。
現代の製造業とは逆行した形になりますが、効率を追い求めるのでなく、最高の仕上がりになるように時間を掛けて、心を込めて、一本一本を丁寧に仕上げていく。
試作を作り、確認し、修正し、また作り直す。
簡単に答えを出さず、何度も確かめる。
その中から見えてきたのが “弾性階層” という考え方でした。
人それぞれの体力、年齢、感覚に合わせ、
無理なく、長く使えるロッドを作るための構想です。
効率や流行ではなく、人の感覚と調和するロッドを作りたい。その想いが、CRFブランクの設計、製作のすべての基礎にあります。
流れに逆らう道は、孤独です。けれど、その中でしか見えない景色があります。誠実に、真っすぐに作ったものは、時が経っても決して色あせません。
五年先、十年先、そして二十年先に「この一本を持っていてよかった」と思っていただけるように。その一心で取り組んでいます。
◼️物を大切にする心
物を大切にする心を、ものづくりの基本として大事にしています。会社の機械、社用車など、20年を超える車、30年になる機械も、きちんと整備して大切に使っています。
私の愛車も、もうすぐ初度登録から25年になります。買い替えができないから乗っているのではなく、心から好きで、ずっと乗り続けています。
車もバイクも、あの時代だからこそ作れたものがありました。あの時期へは二度と戻ることは出来ません。それはただの“古い物”ではなく、人の想いと情熱が詰まった“時代の証”なのです。
カーペンターのハンドルペイント入りカスタムロッドや、ハンドペイント入りのルアーも同じです。また、CRF以前のカーペンターロッドも同じです。
あの時代だからこそ生まれる事が出来ました。今ではもう、同じものを作ることはできません。
どうか、あの時代のカーペンターの道具をお持ちの方は、その一つひとつを大切にしてください。そこには、私達、作り手の心と情熱が宿っています。
それは単なる“物”ではなく、私達、作り手の魂そのものだから。それは、私たちの原点であり、ものづくりの道しるべでもあります。
そして、その想いを受け取ってくださるカーペンターファンの皆さまのお陰で、私たちのものづくりが続けられています。
これからも、手にしてくださる方の心の中で生き続けるような道具を、心を込めて作り続けていきます。
ありがとうございます。
