
朝焼けにけむる道を、1台の車が走っていた。
真上からの映像で、どんどんと車に近づいて行く。
すっと動いて、運転している人の顔が見えるくらいまで近づいた時。
「あっ、わたしじゃないか」
「ほんとだ、おじさんがいる。これってこのUFOから、映したものなの」
「そうだよ。正ちゃんは一度この宇宙船を見ているんだ、覚えているかい」
「覚えているさ。最初は飛行機かと思ったけど、カラフルな色に光っていて、
しかも朝の早い時間だったから、飛行機ではないと思っていた。
そうしたら後はUFOしかない、そう思って夢中で走っていたんだ。
途中で車を停めたいと思ったけど、高速道路だったからそうも行かなくて…」
車を運転しながら、時々ちらっちらっとこちらを見上げる正一の表情まで、
手に取るように見える。
必死になって追いかけて様子が、画面を通じて伝わって来る。
「どうしてこの後、この時のことを本に書いてくれなかったの。
せっかくいいチャンスをあげたのに」
「誰に話しても、信用なんかしてくれないと思って。
自分の中にだけ、そっとしまっておいたんだ」
「この時だけじゃない、正ちゃんは何回か見ているはずだよ。
それとヒカルも、あの公園で1度見ているよね」
「えっ、ぼくも」
「そうだよ、昨日の夕方だった。
ハロウィン・ロケットを飛ばし終わって帰ろうとした時に、
夕焼けに染まる空に何か光っていたものがあったよね」
「うん。そう言えば見たような気がするけど、
星かと思ってあまり気にしてなかったよ」
「まぁ仕方がないかな。2人のことは、ここに来てもらう前から、
見て知っていたんだよ。じゃあさっきの話の続きをするよ」
画面が、正一の車の中からUFOを見上げている場面に変わった。
赤や黄色や紫などに光り輝きながら、静かに空に漂うように浮かんでいる。
車は高速道路を、物凄いスピードで走っている。
その車を見守っているかのように漂う1機のUFO。
そしてまた画面は、上から車を見ている場面に戻り、
音もなくその場面が消えて、月から見る地球へと移る。
「愛のことはさっき話したから、今度は2つ目の統一のことだよ。
よーく地球を見てごらん、地球はいくつに見えるかな」
「1つに決まってるじゃないか」
「そうでしょう、確かに地球は1つだ。
でも君たちは日本人だね、アメリカ人やフランス人とは違うね」
「そんなの当たり前だよ。それが一体どうしたと言うの」
「そうやって国があって、みんなバラバラなままでは、
ぼくたちの仲間にはなれないんだ。
国をなくしてみんなが1つにならないといけないんだ」
「簡単に言うけど、わたしたちみたいに力も何もない人に言ってもムダだよ。
そう言うことは、もっと力も権力もある人に言わないと」
「正ちゃん、あの時はなぜ車に乗って、あんなに遠いところに出かけたのだっけ」
「あれは、ちょっとね。どうしても見たい風景があって、それだけだよ」
「違うな。ある人に会いに行った、正ちゃんにとってかけがえのない大切な人。
亡くなった正ちゃんの、かつての奥さん」
正一の瞳から落ちそうになる、1粒の…。
ある風景 -人生はこれからだ-
思えばいつも
一人で歩いていた
一人で思いをめぐらせ
一人で見つめながら
一人で何かを黙って
考えていた
ある日
一人で車を運転し
明け方の高速道路を
走っていた時だった
ぼくの視線の斜め上を
キラキラとした何かが
浮かんでいた
その時
ぼくの思いの全ては
吹き飛んでしまったのだ
一すじの風のように
ぼくは一人ではなかった
ぼくたちはいつも
誰かに見られている
何かに支えられている
ぼくたちの存在とは
何かを形作っている
細胞の一つ一つ…
心はどこにあるのか
宇宙の果ては
どこにあるのか
今までたった一人で
抱えこんでいたと、思っていた
思いの一つ一つが
ゆっくりと解けて行って
残ったものこそ
あの
キラキラとした何か
ぼくたちの心の中に広がる
風景とは
ぼくだけのものでも
ぼくだけが覚えているものでもない
この心は
全ての存在とつながっている
きっとこの風景も
全ての存在の中に
しっかりと広がっている
ぼくたちの心が作っている
ぼくたちの思いで
この世界は出来上がっている
だからぼくは
安心しきった顔をして
大きな大きな木に
ぽつんと寄りかかりながら
歌っている
ほのかなぬくもりを包んで
ほら、あそこに
キラキラとした…
ハロウィン・ロケット -10- に続きます。
絵は友人のやのさんが、描いたものです。