さつま揚げです。

地元にある魚屋さんのさつま揚げは、美味しいのです。
材料は、地元で採れた魚と地元の木綿豆腐です。昔の我が町、漁師町では、どの家庭でも作られたものです。
我が家でも、よく作っていました。鯵がたくさんの採れたりしたら、三枚に下ろし、身をそぎ、大きな擂り鉢に入れ、大きな擂り粉木で摺ります。すり身は、一旦取り出します。
木綿豆腐をしぼり、これも擂り鉢に。
そしてそれらを合わせ、卵や片栗粉や調味料を入れ、また、摺ります。
そのすり身を、油で揚げるのです。アツアツのさつま揚げは、絶品なのです。
さつま揚げは、各家で微妙にレシピが違うため各家の味になってしまいます。小さい頃から食べた自分の家のさつま揚げが、一番美味しいはずです。
何軒もあったさつま揚げ屋さんが、過疎化と共に少なくなり、三軒だけになってしまいました。魚屋さんのさつま揚げは、我が家の味に限りなく似ているのです。家では作らなくなってずーとこの魚屋さんのを、いただいています。
数年前、93才になった母が入院。だんだん食事も摂らなくなり、毎日点滴がつづきました。そんなある日、
「何か食べたいものは、ない?」
と、聞いたら
「さつま揚げが食べたい」
いつもの、魚屋さんのを持って病室に行きました。
小さく切った方がよいかと聞いたら、そのまま食べたいと言って、手でつまんで歯のない口で食べ始めた。2ヶ月以上、口から食べていないに、むしゃむしゃと、半分以上食べて満足したみたいだった。
それから数日後、母は逝ってしまいました。最後の食事が、さつま揚げだった。
今日、魚屋に行ったらさつま揚げを揚げているいい香りがした。アツアツを買って、お仏壇に供えました。