2017年のアメリカ映画「オール・アイズ・オン・ミー」です。

世界で最も有名なラッパーといっても過言ではない2PACの半生を描いた物語です。
タイトルの「オール・アイズ・オン・ミー」はその2PACのメガヒットアルバムのタイトルからです。

2PACって誰?って人は結構少ないと思います。
世界中で7500万枚のCDを売ったラッパーですからね。
それでも知らないって人でも、代表曲を聴けば絶対1曲は聴いたことがあるはずです。
しかし、2PACは全盛期の1996年に25歳の若でこの世を去っています。

2PACの母親はブラックパンサー党の闘士でした。
黒人差別にたいして徹底的に戦う姿勢を見せた母親は警察に逮捕されたこともあります。
そんな親のもとで2PACはゲットーの生活を目の当たりにしながら育ちます。

白人警官が黒人を道端でボコボコにするなんてことは日常茶飯事。
生活、金銭面においても常に不遇を強いられる黒人たち。
2PACはその全てをリアルに歌詞におとしこみ、その現状を全米に、いや全世界に知らせていくのです。

そんなことをしたらすぐ「国の敵だ」って言いだすのがアメリカです。
アメリカという国はそういう人物をすぐ逮捕して言論を奪ってきました。
現在SNSが広まり、もはや一般市民すらも世の中に発言できる時代になってしまい、アメリカの「隠滅」は難しくなってきてますね。
ちょっと前はEMINEMがアメリカの敵としてチェイニー副大統領に名指しで「聴いてはいけません」って言われたこともありましたね。
まぁ「聴くな」って言われると「聴きたくなる」のが人間ってものですが。

2PACも同じように副大統領に「2PACみたいなギャングスタラップなんか聴いたらダメだ」って発言されてます。
「いい宣伝になるぜ」ってことも考えられますが、やっぱりアメリカという国は恐いですね。
「お前を標的にしたぜ」って宣告したようなものですから。

こうやって2PACは国から目をつけられる存在になります。
よく分からない罪で警察に逮捕されたりすること10回以上。
歩いて信号無視しただけで警察が銃かまえて2PACをとりおさえる、なんてこともありました。
今なら誰かがそれを撮影していてSNSに投稿して「やりすぎだ」って大問題になるんでしょうけどね。
90年代はやられたら終わりです。

しかし2PACという男はそれでおとなしくなる男ではありませんでした。
より過激に警察にたいしての文句をラップで歌い、国や黒人差別についてリアルに発言していきます。
CDはバカ売れ、黒人達は立ち上がり、差別をなくすために動き始めるのです。
アメリカとしてはそれは面白くない。

そして2PACはレイプという罪で逮捕されます。
当時2PACはモテモテで、わざわざレイプなんかしなくても抱かれたい女が毎晩100人はやってくるような状態です。
わざわざそんなことする必要はないんですが。。。

裁判で2PACは4年の実刑になりますが、もちろんこれは冤罪なので9か月ほどで釈放されています。
でも世間的に2PACにレイプのイメージをつけるということは成功したんでしょう。
「暴力」「殺人」の罪をきせるより「レイプ」の方がイメージダウンになりますからね。
2PACが逮捕された10回以上の事件、ほとんどおかしなことばかりです。
罠のようなことばかりです。
アメリカは認めないでしょうけど、国家レベルで2PACを危険視してたってことでしょうか。

2PACは釈放されてからたまりにたまったうっぷんを2枚組のCDにブチ込みます。
それが「オール・アイズ・オン・ミー」というアルバムなんです。
世界的に記録的な大ヒットとなり、日本でも大ヒットしてます。

立て続けにもう1枚アルバムを出し、それも大ヒット。

しかし、その後、クラブに向かう途中の車の中で射殺されてしまいます。

映画はここで終わるんですが、2PACの伝説はまだここから続きます。
死後、彼のアルバムが次々発売されてるんです。
どれも100万枚をこえるヒット作ばかりです。

「未発表音源」とされてますが、未発表が多すぎて「2PACは生きているんじゃないか説」がまことしやかに言われてました。
生前撮影されたというPVで2PACが履いてたスニーカーがその当時まだ発売されてないものだったりして、「やっぱり2PACは生きてる」って当時話題になったもんです。

実際、命を狙われ続けてた2PACですので、身の危険を感じて「死んだこと」にしてどこかでひっそり生きてるのかもしれません。
その時レコーディングして、たまった曲を「未発表音源」として出してても不思議じゃないですね。

ちなみに2PACを殺害した犯人はいまだに捕まっていません。
ので未解決事件なんですね。

この映画では2PAC以外にも色んな実在の人物が登場します。
ドクタードレー、スヌープドッグ、シュグ、そしてノトーリアルB.I.G.ことビギー。

このビギーが2PACと当時争ってた男でして、当時1番の犯人説がありました。
ビギーは東、2PACは西で活躍した両方とも伝説のラッパーなんですが、もともと友達だったようですね。
自分が2PAC知ったころはすでやりあってましたけど。

収監される前に2PACが銃で5発撃たれるという事件がありましたが、これがビギーのしわざなのではと2PACが勘ぐったみたいです。
出所後2人の関係は悪化していき、2PACが西海岸に乗り込んで活動を始めたことでビギーが報復したという噂です。

しかし、そのビギーも半年後になにものかに射殺されてしまいます。
2PACとビギーという90年代を代表するラッパーの死。
そして2つの事件ともに未解決という不可解さ・・。

今現在ではビギー率いる東の軍団が2PACを殺したというよりは、東海岸のギャングが西海岸のギャングになわばりを取られるのを恐れて西の代表格であった2PACを襲撃したのでは、、、って説が強いらしいです。

当時もその後も自分は2PACの死について色々読んだりしましたが、謎がとても多いです。
90年代のあの独特なギャングスタなノリと勢い、アメリカ中がHIPHOPに熱狂してたあの時代、みんながおかしくなってたのかもしれませんね。

この映画は2PACを知らない人が2PACを知ることの出来る映画ではありません。
2PACを知っていて、曲もたくさん聴いていて、あの事件のこともある程度知ってる人のみをターゲットにした映画だと思います。
なのでアメリカでは1位を獲得した映画ですが、日本では一部の人しか盛り上がらなかった映画ですね。

90年代の異常な熱気の中、生き急ぐかのように死んでいった2PAC。

「もし今2PACが生きてたらどんな曲やったのかな」なんてことを考えてしまいます。

オススメ度 63%