2016年のアメリカ映画「パッセンジャー」です。
日本では2017年に公開されました。
ジェニファー・ローレンス、クリス・プラットが出演しています。

地球に似た星に移住するために5000人を超巨大宇宙船に乗せて旅立たせたところから物語は始まります。
映画の冒頭から宇宙でして、最後まで宇宙です。

目的地に着くには「120年」かかるために乗客たち(パッセンジャーズ)とスタッフ全員はコールドスリープ状態です。
つまり寝てる間に120年経過して無事目的の星にたどり着けるってわけですね。

しかし、映画の冒頭で隕石の衝突によって何やらエラーが生じて、ジムという男だけがコールドスリープから目覚めてしまいます。
5000人が眠る宇宙船でただ1人のジム。
しかし驚くところはこの後です。
なんと地球を出てからまだ30年しかたってなかったのです。
つまり残り90年。

90年間、ひとりぼっち!!!!!

ジムは毎日やることもなくひとりぼっち、なんですが。
この超巨大宇宙船には充分すぎる食料や娯楽施設があり、まぁまぁ楽しそうです。
美味しい食事をして、映画館で優雅に映画を観て、夜はバーでお酒を飲む。
ジムは中々のぼっち生活を満喫するんです。

そんなある日、ジムはたくさんの乗客が眠るポッドを見ていたところ、1人の女性に目を奪われます。
美しく眠る女性の名前はオーロラ。
ジムは眠るオーロラに一目ぼれしちゃうんです。

と、ここまでが30分です。
120分弱の映画の4分の1、ひたすらジムの孤独な毎日を見せられるんです。

さて、ジムはオーロラに恋しちゃって毎日オーロラのことばかり考えてしまいます。
そこでジムはとんでもないことを思いついちゃうんです。

「そうだ、オーロラも起こしちゃおう」

とんでもないことです。
このまま眠っていれば90年後に無事目的の星に着いてそこでオーロラは生活をする予定なんです。
でも、ジムが今起こしちゃったら、90年間コールドスリープ出来ない。
年齢が30歳くらいだとしても、着くころは120歳、まぁ無理です。
つまり起こしちゃったら最後、もうこの宇宙船で死ぬしかないんです。

ジムは・・・、結構あっさりとオーロラを起こしちゃいます。

ここでやっとこさ1番上に名前のあるジェニファー・ローレンスが動き出すわけですね。

さて、起こされたオーロラはパニックになり90年後まで自分が生きていないことなどを考え絶望になります。
でもここ、30分間ひたすらジムで見せられたことなんですよね。
本人にとっては大変なことですが、この映画を観てる人にとっては「うん、そうだね、さっき見たもん」って感じです。
問題はここからです。
ジムは自分がオーロラを起こしたことを隠してるんです。
「俺もそうだったんだ、1年間ひとりだったんだ、そうそう、こうやって機械壊れちゃったんだね」みたいな感じでオーロラはエラーで起きたってことにするんです。

こっから先はもう予想出来ますね。

ジムはオーロラと仲良くなり、「何だふたりでも生きていけるじゃん」ってことになるラブラブ展開。
何でも揃ってる宇宙船の中で毎日ふたりっきりのラブラブ生活開始。
これが30分ほど続きます。

んで、そっかーらーのー。
実はジムが意図的にオーロラを起こしたってことがバレて大ゲンカの流れ。

それを想像しますが、これが想像どおりそのままです。

で、結果的に1年間2人で過ごし、ジムは合計2年間この宇宙船で過ごしたことになるんです。

で、2年前のあの隕石が宇宙船に更なる問題を起こしていき、2人でそれを解決するという流れ。

「たぶんどっちかがまたコールドスリープ出来るようになるんだろうな」っていう予想も的中。
ここまで演出も含めてそうとしかないだろうという展開だけが続きます。

なので見どころはラストですね。

「ジムがオーロラにコールドスリープを譲り、感動の別れ」
もしくは。
「それをオーロラが断り、オーロラはジムと残りの時間をこの宇宙船で過ごす」

さぁ、どっち?

という感じの映画でした。

それにしてもここまでスゴイ宇宙船を作り、綿密に計画を練っておきながら、エラーによって「早く目覚めてしまった場合」が考えられてないってことがおかしいですね。
ありとあらゆることを想定して作られていて、不必要な機能まで満載の宇宙船において、何でこんな初歩的なエラーが起きることを考えてなかったんでしょう。
5000人いたら4000人は「で、途中で目が覚めたらどうするんですか?」って会社に訪ねたと思いますよ。
その時何て答えて4000人を納得させたんでしょうね。

会社「大丈夫です、それはないですから」
乗客「あ、そうですか、ないならいいです」
とはならないでしょうし。

会社「起きたら起きたで残りの人生宇宙船で生きるのもいいですよ」
乗客「確かに、それも楽しそう」
なんて言わないでしょうし。

もしかするともっと他にも色々と必要な機能がなかったんじゃないかな、この宇宙船。

さて、オチのオチ、大オチを暴露しちゃいますが。

最後の決断、オーロラはジムと一緒に起きたままで宇宙船で暮らすことを選びます。
そのシーンは見ることが出来ませんが、どんな生活だったのか、何より気になるのはそこだったような気がします。
子供を作るとその子がまた孤独になるので作らなかったんでしょうね。
で仲良くふたりきりで生きていったとして、いつかどちらかが先に死ぬ日がやってくるわけで。
年齢的にも男性のジムの方が先に死んだでしょうから。
オーロラは最後の数年、もしくは10年くらいをひとりっきりで暮らしたんでしょうか。

あぁ、この映画は全部予想どおりでありきたりだったんだけど、観客が観たかったのはその後のふたりの生活だったんじゃないでしょうか。

面白い話なんですけど、物足りなさがだいぶあるSF映画でした。

オススメ度 49%