
2日後の3月4日(日本時間では3月5日)はアカデミー賞ということで、今回は2017年のアカデミー賞の作品賞、つまりは現チャンピオンの映画です。
2016年のアメリカ映画「ムーンライト」です。
8部門にノミネートされた今作は作品賞だけでなく、助演男優賞と脚色賞も受賞しています。
「あれ?去年のアカデミー賞の作品賞って「ラ・ラ・ランド」じゃなかったっけ?」って人も多いでしょう。
去年のアカデミー賞の授賞式の作品賞の発表の時に「作品賞はラ・ラ・ランド」と発表して、盛り上がった後に「あ、違う違う、間違いだ、作品賞は「ムーンライト」だ」って言い直しがありました。
スタッフ側が主演女優賞の紙を作品賞の時にも渡してしまったことが原因だったそうです。
関わった人達は即クビになったとかなんとか。
そういうのもあって、話題にはなったけど、印象的にはなんとなーく「ラ・ラ・ランド」が受賞したような感じになってます。
が、受賞したのはこっち、「ムーンライト」の方ですよ。
さて、この映画なんですが、感想を先にいうと、「余韻がはんぱない映画」って感じです。
物語は大きく分けて3パートに分かれてます。
主人公はシャロンという黒人の少年。
シャロンは「リトル」というあだ名で呼ばれている、気弱で真面目な少年です。
でもその性格からシャロンは学校でいじめられる日々。
ある日、シャロンはフアンという麻薬の売人のおっちゃんに出会います。
このフアンを演じたマハーシャラ・アリが助演男優賞を受賞していますよ。
この序盤の部分にしか出て来ないんですが、存在感が圧倒的でした。
2つめのパートはシャロンの高校時代。
フアンは亡くなっていて、シャロンは相変わらず学校でいじめられています。
気弱な性格は変わらないのですが、どこか冷めていて「あきらめ」と同時に「覚悟」みたいなものを感じる高校生になっています。
シャロンはケヴィンという友達とだけ仲良く話すことが出来ます。
ケヴィンとは子供の頃からの友達で、ケヴィンだけはシャロンをいじめたりしません。
シャロンはある晩、海辺でケヴィンと会い、大麻を吸います。
日々の嫌な事を煙とともに吐きだし、シャロンはケヴィンとキスをします。
そして、ケヴィンはシャロンの下半身に手をのばし・・・。
学校でケヴィンはシャロンをいじめてる奴らに「シャロンを殴れ」と命令されます。
断れなかったケヴィンはシャロンを殴り、その後シャロンはリンチに・・・。
数日後、シャロンはいじめっこを後ろから椅子で殴りつけ、学校を退学、少年院へ。
3つのパートは大人になったシャロンです。
シャロンはあの後少年院で悪い奴等と知り合い、麻薬の売人の道へ。
そして売人の中でのしあがり、現在はフアンのようなリッチな売人になっています。
体は鍛えてムキムキ、歯は金のグリルをはめ、金のチェーンを首からさげ、悪そうな車にゴリゴリのラップソングという状況になってます。
そんなシャロンの携帯に高校時代以来のケヴィンからの電話が。
シャロンはケヴィンが働いているレストランに行き、2人は再会。
高校を卒業してからの2人は全く違う人生を歩んでいて、中々2人の距離は縮まりません。
が、シャロンはケヴィンに「あの時以来、俺に触れた人はお前だけだ」と告白します。
ケヴィンは驚きと同時に嬉しさを感じ、2人は・・・。
というストーリーです。
2つめのパートでシャロンとケヴィンが海辺で始まっちゃった時はかなりビックリしました。
でも1番驚いたのは3つめのパートでのシャロンの変貌ぷりです。
まるで50セントみたいなゴリゴリのギャングスタになってたんですから。
ご飯を食べる前には金のグリルを外したり、Tシャツがしわにならないように車を降りてからTシャツを着たり、結構そういう描写が細かいです。
ギャングスタな描写がリアルです。
セリフが多い映画じゃないんですが、代わりに細かい仕草などが妙に納得できました。
この映画の特徴といえば、1・2・3のパートそれぞれの色合いを変えてることです。
結構ビックリするくらい色のコントラストをいじくってて、それが幻想的であり時にリアルに感じさせる映像に仕上がってます。
黒人のもつ肌の美しさなどを表現することにこだわったそうでして、独特な色合いが不思議でした。
「月の明かりの下では黒い肌が青く見える」というセリフが印象的でした。
その映像処理だけでも凄いなぁと思いましたが、やっぱり「同性愛」の部分がこの映画ではかなりショッキングです。
劣悪な環境で育った黒人の少年が結局ワルの道にいってしまうというよくあるストーリーなんですが、そこに同性愛を含ませることで全く違うものに感じさせられました。
独特の色合いとその映像を後押ししてくる音楽、そして役者の演技、ううん、この映画、期待以上でした。。。
観終わったあとの「余韻」がこれまた独特でして、今まで感じたことないような感情の中スタッフロールを眺めてました。
正直「アカデミー賞の作品賞とった映画なんか眠たいだけでしょ」って思って観始めたんですが、アカデミー会員の老人たちもたまには良い映画選ぶもんだって思いました。
そろそろSF映画に作品賞をあげてもいいのでは、って思います、毎年そう思ってます。
今年のアカデミー賞は2日後ですが、今年は去年の発表ミスが絶対おこならないように厳重にやるでしょうね。
それと同時にあの「ミス」を「ネタ」にした演出が絶対にあるでしょう。
前代未聞の「作品賞のタイトル間違え」という去年の放送事故があったせいで何となーく「ラ・ラ・ランド」のインパクト強めでしたが、去年作品賞を受賞したのはこの作品「ムーンライト」です。
去年、映画館に行った大好きなノーランの新作「ダンケルク」か、これから映画館に行く予定のギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞をとったら嬉しいですね。
でもノーランなら「インターステラー」で受賞しておくべきだったと思いますけどね。
「インターステラー」を選ばなかった時のアカデミー会員の老人たちには今も失望しています。
今頃「ダンケルク」で「ノーランって凄い人だね」なんて言い出すのも腹がたつので今回は「初のSF作品受賞」ということで「シェイプ・オブ・ウォーター」を推します!
オススメ度 71%