
2015年のアメリカ映画「エベレスト」です。
出演はジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、エミリー・ワトソン、キーラ・ナイトレイ、サム・ワーシントン、ジェイク・ギレンホールなどなど、と豪華です。
この映画は実話をもとにして作られていて、1996年に起きた「エベレスト大量遭難」を映画化したものです。
これはエベレストで起きた最も最悪な事故とされています。
2014年にこの1996年の遭難をこえる事態になり、今ではその2014年が最悪の事故とされてるそうです。
ちなみにですが、この2014年は日本テレビの「イッテQ」でイモトアヤコさんがエベレストに登ろうとしてた年です。
ちょうど登る直前に大事故が起き16人が亡くなったため、日本テレビはイモトアヤコさんのエベレストチャレンジを急遽断念したんですね。
本当に登らなくて良かったと思います。
この映画を観たらそう思います。
テレビ局のバラエティ番組で芸人が登ってどうこうしようという山じゃないことがよく分かります。
「イッテQ」ではエベレストはやらない方がいいと思います。
それくらいこの映画恐いですから。
さて、エベレストの簡単な説明から。
エベレスト、通称チョモランマはヒマラヤ山脈にある世界最高峰の山でして、人間が登ることの出来ない山として近年まで存在していました。
初めてエベレスト登頂に成功したのは1953年です。
もちろんそれまでたくさんの人が死んでます。
もちろんそれ以降もたくさんの人が死んでます。
近年では道具などの進化によって昔ほど難しい山ではなくなったのですが、それでも死人は出ます。
生きて戻れたとしても足の指を失ったりと、リスクが高い、というかリスクしかない登山です。
更に近年になると、エベレストの登頂がビジネス化してるそうでして、お金を払って「ツアー」として参加してエベレストに登ることが出来ます。
ですが、です。
バスに乗って箱根温泉ツアーみたいなものじゃありません。
あくまでも世界的に有名な登山家が集まって「せーの」でチャレンジするというもの。
その費用も1人700万円くらいかかります。
もっとかかる場合もあります。
「行ってみようかな」くらいではもちろん行けないツアーです。
映画はこのツアーに参加する人達が集まってくるところから始まります。
1996年、世界中からエベレストに人が集まって、今年もまた死の登山にチャレンジするってわけです。
ここでビックリするのが、「すぐには登らない」ってことです。
1ヵ月くらいかけて体を山にならしていくんです。
キャンプをはって、上にのぼって降りる、また上って、降りる。
これを繰り返すことで体が山に順応していくのです。
んで、体調と天候がバッチリの時に山頂にアタックするという段取りです。
ここらへんは「イッテQ」観てる人には分かりやすいと思います。
5月10日、体調も天候もバッチリ、さぁアタックだ!ってことになります。
で、必死に登ります。
もはや「金払って何でこんなことするの」って言いたくなるシーンの連続。
山頂に近づくと酸素も薄く、酸素ボンベで酸素を吸いながら極寒と戦い、山を1歩1歩登っていく。
地獄ですよ、地獄、永遠に地獄。
だから「何で登るのよ」って言わずにはおれない映画です。
登場人物達も「お前は何で山に登るんだ」ってお互い聞きあってます。
明確な答えも出ない中、自分は何で登るんだろうと自問自答するんです。
そんな分からないものに700万円かけてチャレンジするかねって感じです。
最初から最後まで分からないんです、でも山登りってそういうもんなんでしょう。
分からないんです、「行かなきゃいいのに」がずっと頭の上に乗っかった状態で観る映画です。
「平和に暮らしてた家族がある日とんでもないこに巻き込まれた・・・」みたいな状況とは違うんです。
700万円作るために仕事を掛け持ちして貯金して貯金して、切り詰めて。
足りないお金は寄付などをつのって、更に足りないなら物を売って、そして足りないなら借金して。
何とか捻出した700万円でエベレストに登る。
全く理解できません。
正直、そのお金あったら「豪華客船」に乗って旅ができますよ。
700万円で、あなたなら「エベレスト登頂」と「豪華客船の旅」どっちを選びますか?
映画は中盤あたり1時間ほどでエベレスト山頂の到着します。
この映画は2時間です。
映画の半分で山頂に着くんです。
山を知らない自分でも映画のことは少し分かります。
これは大変なことなんです。
要するに「山頂に辿り着く」というとこがメインじゃないってことなんです。
残り半分は、「下山」、ここにとんでもないことが待ってるってわけです。
自分はここで初めて理解しました。
あ、この映画「登る映画」じゃないんだと。
「降りる映画」なんだと。
そうです、ここからは更に地獄、というかさっきまではまだ平和だったんだと思い知らされます。
色んなアクシデントもありますが、何より天候が一気に悪くなり。
猛吹雪、絶吹雪、極吹雪。
雪が降ってるという表現はなまぬるい。
「ドーン!」と地面が割れ、「ガーン!」と雪の壁が体当たりしてきて、「ズーン!」と体を冷やしてくる。
酸素が無い、寒い、息苦しい、凍える、前に進めない、目が見えない、意識が朦朧とする、生きて帰りたいという気持ちすら奪われる。
何も分からない、後悔する気力もない。
死ぬ・・・。
ひたすら絶望のような状況が続きます。
だから「何で登ったのよ!」と今更言っても仕方ないんですが。
この映画は実話なので、映画で死んだ人は本当に死んでます。
この日登った人の中には日本人の難波康子さんもいて、世界的に有名な登山家だったそうですが、この事故で亡くなってます。
映画は最初の半分の「登り」から、後半の「くだり」に。
そして、そこからは「家族との別れ」が待っています。
もう助からない男が家にいる妻と無線と電話を繋げての最後の会話は悲しすぎます。
その妻のお腹には赤ちゃんがいて、ラストであれから20年たって大きくなった実際の娘さんの映像も出てきます。
凄い映画で感動したんですが、やはりエベレストは恐い。
日本テレビはイモトアヤコさんを連れてエベレストに登るのはやめた方がいいと思います。
エベレストは人間が立ち入ってはいけない場所なのかもしれません。
オススメ度 61%