
2016年の日本映画「葛城事件」です。
三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈が出演しています。
この映画は日本で実際に起きたある事件をもとに作られたとされています。
それについては後ほど。
映画は、自分の家の壁に書かれた落書きを消す三浦友和演じる清の映像から始まります。
壁には「人殺し」などと書かれていて、それを清は必至で消しています。
そこに1人の女性がやってきます。
田中麗奈演じる順子なんですが、順子は「稔さんと結婚したい」と清に言います。
稔というのは清の息子でして、現在刑務所にいるそうです。
そして、稔の罪は「殺人」、刑は「死刑」。
という感じで始まります。
最初なんのこっちゃ分からないんですが、観ていくうちにじょじょに事件のことが分かるようになっています。
映画の中では時系列がグチャグチャで流れていきます。
最初は「事件後」から、そして「事件前」に戻ります。
どうやら、清の家庭は妻の伸子、稔の兄の保の4人家族だったみたいです。
「事件後」では「清」しか家にいなくて、「稔」は刑務所です。
伸子と保は?っていうのがこれから明かされていきます。
清は家庭では傲慢でして、口も悪くすぐ手も出ます。
家の中は清の言いなりで暮らすことが当たり前になっていて、清自身にその自覚はありません。
保は家を出ることを決意し、その後結婚して子供も生まれます。
後に殺人で捕まる稔はアルバイトを始めては辞めるを繰り返し、それを父親の清に色々言われる毎日。
清は更に母親である伸子も責め続け「お前のせいだお前のせいだ」と言い続けます。
時に暴力を振るう清に嫌気がさし家を出る伸子。
伸子はアパートの部屋を借りて暮らしていたんですが、清に見つかり家に連れ戻されます。
保は家を出たので幸せな生活をしてる・・・と思ってたんですが、保は仕事をクビになりそれを妻に言い出せなくて毎日仕事に行くふりをして公園で時間をつぶしています。
仕事を探そうにも見つからない。
自分には妻も子もいる。
思い悩んだ保は以前働いていた職場のビルから飛び降り自殺をするのでした・・・。
これによって稔は「自分も・・・」と何かを決意し、通販でサバイバルナイフを購入。
そして、稔は地下鉄乗り場でサバイバルナイフを振り回し多数の死傷者を出して逮捕されるのです。
伸子は精神がおかしくなって病院へ。
ここでやっと映画の冒頭に繋がるんです。
こうやって一家はバラバラになり、現在清だけが暮らしてるというわけ。
さて、問題はまだあります。
順子が「稔さんと結婚する」と言い出してる件についてです。
順子は死刑反対の運動をしてる女性でして、稔が死刑にされることを反対するために結婚しようとしてるんです。
しかし、稔には人間の心なんかありません。
「俺と家族になるなら毎月6万円もってきて」と言い出す始末。
稔にはまともな思考が無いんです。
完全なサイコパスなんです。
順子も頭おかしいですけどね。
無差殺人鬼に獄中での結婚を申し込むなんて。
そして、家では1人残された清が・・・。
というずーっと永遠に続くかのように暗い話です。
作り手も「観て楽しんでもらおう」なんて思って作ってませんからね。
「これ観てあなたはどう感じる?」ってところだと思います。
さてさて、この映画なんですが、実話をもとに作られています。
といっても韓国映画みたいに忠実に再現VTRのように作り上げたものではなく、「参考にした」程度でしょう。
というか、その参考にした事件も発表はされてませんから、観た人が「あの事件のことかな」って予想する程度です。
では、ずばりこの映画、何の事件をもとに作られたのか。
それは2001年におきた「附属池田小事件」です。
覚えてる人も多いでしょう。
宅間守という男が小学校で無差別に子供を殺したという事件です。
逮捕されたあと宅間守は一切反省や後悔をせず、「早く死刑にしろ」と言うだけ。
あまりにも衝撃的な事件、そして宅間守という完全なるサイコパスの男の言動。
日本中がこの事件に対して嫌悪感を抱きました。
そして、宅間守は異例のはやさで死刑が執行されました。
宅間守とこの映画の稔はとても境遇が似ていて、兄が自殺していたり、父親が独裁者だったり、母親が精神を病んでいたり。
そして、獄中で宅間守も獄中で結婚したそうです。
さすがに映画で子供を殺すシーンは作れないため、地下鉄で大人を殺したってことになってますが。
それ以外はかなり似てると思います。
更に死刑の時の最後の言葉も同じ感じです。
この映画の稔は死刑執行前に「炭酸が飲みたい」と言って、コーラを飲ませてもらい死んだそうです。
宅間守は「煙草が吸いたい」と言って、煙草を貰い吸って死んだとか。
中々重く苦しい映画なんですが、日本では実際の事件をもとにした映画って中々作りづらいので、今作みたいに映画として残していくことも必要かなと思いました。
観る時はそれなりに勇気もって観ましょう。
かなりダークな後味をくらいます・・・。
オススメ度 53%