2014年の韓国映画「殺されたミンジュ」です。
監督は鬼才キム・ギドク。
脚本も製作も撮影も編集も全部キム・ギドク。
それがキム・ギドクスタイル。
キム・ギドクを知らない人は「アリラン」という映画を観ると分かりやすいと思います。
「こういう人ね」って分かります。

さて、何も知らないで観始めたんですが。
最初にいきなり1人の少女が殺されます。
夜道を歩いてた少女は後ろから数名の男達に追いかけられ、捕まり、顔にビニールテープグルグル巻きにされて窒息死。

続いて場面は変わりまして、それからしばらくたったある日。
とある男が拉致され軍服などを着た男達に拷問を受けます。
で「5月9日、何したか、ここに書け!」と軍服の奴等のボスは言うんです。
書かないと、棒にクギさした「釘バット」みたいなのでボッコボコにやられます。
死なない程度にクギが短くなってまして、肉にクギが刺さりまくるというエグい拷問です。
拉致された男は紙に何かを書き、解放されます・・・。

という始まりです。
何のこっちゃ分かりません。
この後もまた違う男が拉致されて、軍服達に拷問を受け、何かを書かされ解放されるを繰り返すのです。
しかし、次第に何が起きているのかが分かってきます。

拉致された男達は冒頭で少女を殺した連中なんです。
日頃の生活も傲慢で、見ていて腹立つクズ野郎ばかり、なので拷問シーンも「かわいそう」とは思いません。
むしろ「何故殺さないで解放するんだ」って思ってしまいました。

さて、では、拷問をしてる側はというと。
ボス以外はその辺から集められた「負け組」です。
借金まみれ、友人に騙され無一文、バイト先で苦労してる、就職できない、などなど。
日頃の生活に嫌気がさしてる連中なんです。
殺された少女とは無関係。

殺された少女と関係があるのはボスのおっさんだけ。
このおっさん、実は殺された少女の「父親」なんです、たぶん。
たぶん、というのは詳しいこと明かされてないから。
でもまぁたぶん父親なんでしょう。
で殺された少女の名前が「ミンジュ」なんでしょう。

さてさて。

娘(たぶん)を殺されたおっさんの復讐劇だったことが分かるんですが、さすがはキム・ギドク。
「痛快な復讐もの」に仕上げないのです。
復讐される側も上から命令されただけで、その後罪の意識から自殺したりしてるんです。
復讐してる側もただ「日頃のうっぷん」をはらしたいだけ。
いったいこの「復讐」に何の意味があるのか・・・。
最後でミンジュを殺すように命令した男を拉致するんですが、この男も何故ミンジュを殺したのか分かっていません。
結局、最後までミンジュが殺された理由が分かりません。
何やら政府によってミンジュは抹殺されたみたいですが、いったいあの女の子に何があったのか。
父親であるおっさんは何ひとつ真実を知ることなく死にます。

映画はそこで終わるんですが、いったい何だったのか、自分は今なにを見せられていたのか。
なにより後味の悪さ。

キム・ギドクの映画は毎回「重苦しい」。

オススメ度 47%