
2015年のイギリス映画「マッド・ドライヴ」です。
原題は「Kill Your Friends」でして、日本では劇場未公開です。
DVDも日本版はまだ発売されないのかな?なので邦題も適当なやつですね。
主演はニコラス・ホルトです。
邦題はそのニコラス・ホルトが出演して大ヒットした「マッド・マックス」の「マッド」を強引に入れたのかな。
1997年のロンドンが舞台です。
主人公スティーブンはレコード会社に勤めるA&Rです。
A&Rって何となーく聞くけど意味なんだっけ?ってことで調べてみました。
A&Rは「Artist and Repertoire」の略でして、アーティストを発掘して契約してアルバム作りをさせる仕事だそうです。
音楽プロデューサーとは別でして、レコード会社の社員で人材発掘と契約が主な仕事なようです。
つまりは音楽的才能なんか必要なくて、とにかく「次流行る奴」を誰よりも先に探し出し安く自分とこに所属させるってわけですね。
アルバム作りとかはミュージシャンに任せて、宣伝も別の人の仕事です。
とにかくノリと勢いで次々新人を発掘しないとクビになっちゃうわけです。
スティーブンは野心家でして、むしろ野心しかありません。
音楽を愛するとかそういう気持ちはなくて、スティーブンは会社で上にのし上がること以外興味がないんです。
でも、肝心の音楽的センスがゼロなので何が良い音楽で何が次流行るかとか分かりません。
「凄い良いらしいよ」って情報をもとに探していくという他力本願スタイル。
スティーブンのメインの仕事は新人発掘よりも「仲間を失脚させること」です。
自分がのし上がるために邪魔な奴を排除していく、それが一番出世に手っ取り早いと考えてるんです。
で、早速邪魔な同僚を殺します。
あまり計画的じゃなくサクッと。
まぁこれで自分が次は出世する番だって感じなんですが、会社はよそから凄腕のA&Rを引き抜いてきたためスティーブンの出世はお預け。
更に殺人について疑われ1人の刑事につきまとわれます。
更に更に秘書としてこき使ってた女性から「殺したのね、知ってるわ、黙っててあげるから、あたしの言うとおりにしなさい」と脅されるのです。
「終わったー」って感じのスティーブンですが、諦めません。
「邪魔な奴は排除する」が彼のモットーなのですから・・・。
という映画です。
スリリングな展開とノリノリの音楽、そしてグダグダな音楽もたまに。
笑っちゃいそうなブラックなノリも生かしつつ、ストーリーでグイグイ引っ張っていく映画です。
音楽業界のこととか全く分からない人でも楽しめます。
ていうか音楽業界の人がこの映画観たら「俺達もっと働いてるよ!」って言うかもですが。
あくまでも90年代のロンドンの話ですからね。
クスリやって女抱いてパーティしまくって気付いたら朝になったから適当に仕事して、夜になったらまたパーティみたいな生活、長く続けるわけないですけど。
90年代といったら日本ではCDが一番売れてた時代ですね。
小室ファミリーが出すCDはシングルでも100万枚軽くこえ、アルバムなんか200万枚、300万枚の世界。
ZARD、B'z、WANDSといった無機質なグループ名が出すやたらとクソ長い曲名の曲もたくさん売れました。
「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」、うん、長い。
でもそういう時代でしたね。
インパクト勝負なとこがあって、ライブでのパフォーマンスとかどうでもよくて、レコード会社がどれだけそのアーティストに宣伝費を回せるかだけの勝負でした。
正直この頃売れてた人達はあまりライブしてませんでした。
それが2000年代に入りインターネットの普及によって音楽がダウンロードの時代に。
CDは以前ほど売れなくなり、アーティストはライブをしっかりやる方向に。
まぁ90年代がおかしかっただけで、やっとミュージシャンがミュージシャンらしい活動をするようになっただけかもしれませんが。
あの熱狂の90年代の裏で日本でもこうやってレコード会社でのアーティストの奪いあいなどが行われていたのかもしれませんね。
オススメ度「58%」