2014年のアメリカ映画「アメリカン・スナイパー」です。
監督はクリント・イーストウッド。
主演はブラッドリー・クーパーです。
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞など6部門にノミネートされました。
ノミネートされた6部門の中から音響編集賞を受賞しています。

「アメリカ史上最高の狙撃手」として知られるクリス・カイルという実在の人物の物語です。
クリスはカウボーイとして働いていましたが、ある日テレビで同時多発テロを目撃。
特殊部隊ネイビーシールズに入隊することを決意します。
地獄の訓練の中、クリスはスナイパーとしての腕を磨きます。

そして、1回目の戦場へ。
時代はイラク戦争へと突入していて、クリスはスナイパーとしてイラクでアルカイダと戦うことになります。
合計4回戦場へ行き、殺した敵の数は160人以上。
クリスはアメリカで最も優れたスナイパーとして「レジェンド」と呼ばれるほどになっていました。

という物語でして、アメリカ人が絶対好きな話です。
いわゆる「パトリオット」をゴリ押しした映画でして、イラク戦争を否定しているイーストウッドにしては珍しい方向性だと思いました。
クリスは2013年に亡くなっていて、この映画がアメリカで公開されたのは2014年です。
時期的にもとても良かったんでしょうね、アメリカでは爆発的大ヒットを記録しました。
アカデミー賞でも軒並み高評価でした。

やっぱり戦争で活躍した人はアメリカでは「ヒーロー」なんだなぁっていう熱狂ぶりが、アメリカじゃない国に住む自分は少し恐く感じました。
もちろんアメリカでもこの映画を批判した著名人が多数いたみたいですが、みーんなネットなどで袋叩きにあってます。
何百人殺そうともそれが敵であれば殺しただけ偉いっていう考え方がアメリカらしくて、そこに「戦争の恐さ」を交えてはいるものの、やはりこの映画は「ヒーロー映画」なんですよね。
なんてことを言う自分がもしアメリカ人だったら袋叩きなんでしょうけど。
あくまでもアメリカ人が好きそうな戦争映画って感じです。

さて、クリスは4度もアメリカと戦場を往復しています。
1度でもあの地獄を体験しアメリカへ帰ってきたら2度と行きたくないはずなのに、4度も行く・・・。
2009年の「ハート・ロッカー」を思い出しました。
「ハート・ロッカー」は戦場に依存してしまい、戦場にいないと生きてる感じがしないという「戦争中毒」になった男の話でしたが、クリスも似たようなところがあったのかも。

映画のラストで実際のクリス・カイルの写真が出てきます。
ブラッドリー・クーパーそっくりで、というか、ブラッドリーの役作りがとても良かったのでクリス・カイルを知ってるアメリカ人的にはより映画に没頭出来たんでしょうね。
ちなみに奥さん役も実際の人とそっくりでした。

しかし、この映画は全てが「実話」ではなく、ところどころ演出が入っています。
ラストでクリスが敵の最強スナイパーと対決し、2000メートルくらい離れたところからそいつを狙撃したっていうシーンがあります。
が、実際にはクリスがこの敵の最強スナイパーと対峙したということは無く、本人も本にそう書いてるそうです。

さて、気になったのはクリスの最後です。
映画では2013年にPTSDを抱えてる青年の射撃訓練に同行し、その男に射殺された・・とだけ文字が出て映画は終わりました。
ちょっと気になったのでこのことを調べてみました。

実際に2013年にクリスはこの男に射殺されてました。
この犯人は戦場で心に傷をおったそうです。
で何故か射撃場でクリスを射殺してるんです。
さっぱり良く分からないんですが、あまりにひどい最期ですね・・・。
この犯人は仮出所無しの終身刑だそうでして、一生塀の中での生活が確定しています。
犯人は一体何故クリスを殺害する必要があったのか・・・。

日本人の自分的にはアメリカ人が熱狂するほどこの映画にバンザイは出来ませんでした。
が、人間ドラマとしてもとても面白く、戦場シーンでのド迫力の音響はさすがでした。
家族や友人、色んなことを考えさせられる1本です。

オススメ度「61%」