
2013年の日本映画「藁の楯」です。
監督は三池崇史。
大沢たかお、松嶋菜々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗、藤原竜也などが出演しています。
原作は「ビーバップ・ハイスール」でお馴染み木内一裕の小説です。
冒頭からグイグイひきつけられる展開です。
とある少女が無惨に殺害され、その容疑者清丸国秀が指名手配されます。
しかし殺された少女の祖父というのが蜷川隆興という経済界の超大物。
蜷川は逃亡中の清丸に対して「10億円」という懸賞金をかけ、殺害を全国民に依頼するのでした・・・。
という衝撃の展開から幕をあけます。
この序盤の展開でかなり圧倒されます。
「なんじゃそりゃ?」っていう展開ではあるんですが、そこに足される設定がこの物語をより面白くさせます。
まず、その「殺したら10億円」なんていう告知をどうやって出したかなんですが。
新聞の見開きにデカデカと広告が出されるのです。
そんなこと普通不可能です。
いくら金をつんでも新聞社がそんな広告出すわけがない。
しかしそこは経済界の超大物蜷川です。
何とその広告が出た直後、その広告に関わった新聞社の偉いさんが60人以上も退職願いを出しているのです。
つまり、蜷川は広告を出すためだけにこの人数分の退職金やその後の就職先まで全て斡旋していたということでしょう。
なるほど、丸ごと金で買ったわけですね。
更にはこの広告だけではなく、削除されないホームページを作成。
そこに清丸に関する情報などを随時掲載していくのです。
でもこれだけで日本人が「さぁ清丸殺して10億円稼ごう」とはならないと思います。
なのでこの蜷川はもう1つ設定を足しています。
これが非常に恐ろしく、本当に金があったら出来るかもと思ってしまうのです。
その設定とは「殺害未遂でも1億円」というもの。
つまりは殺すのに失敗したとしても1億円を払うというのです。
実際殺そうとして失敗した人に1億円が支払われます。
こうなると話は別ですね。
「殺す」となると躊躇するかもしれませんが、殺さなくても金貰えるなら包丁持って襲いかかるくらいはやるかもしれません。
その暴動の中、本当に殺す奴が現れるかもしれません。
もはやこうなってしまっては、病院の看護婦どころか警察官すらも清丸を殺しにかかる可能性があるわけです、充分に。
もちろん清丸はこんな状況で日本中逃げ回ることなんて不可能。
なので清丸はあっさりと福岡の警察署に自首します。
しかし、今度はこの清丸を生きたまま東京の警視庁にまで連行しないといけないことに。
福岡から東京まで、清丸を守りながら護送する5人と、金欲しさに襲いかかって来るそれ以外の全ての日本人・・・。
あっというまにこの状況まで持っていくこの映画のスピード感は圧巻でした。
この状態までささっと持っていった展開作りに「1本」という感じです。
しかし、この映画、ここからダメです。
そこまでしっかりとした展開を作ったのに、そこから約1時間半ほど、B級なサスペンス展開が続くのです。
ん~、出だし最高だったのに・・・。
護衛する5人の中からもちろん裏切り者が出てきたり、もちろん死んだりする者が現れます。
「でしょうね・・・」って感じでした。
ラストなんか眠たい終わり方です。
せっかく序盤であの展開まで持っていけたんだから、そこから更なる予測不可能の事態に持っていけたら、この映画は「覚醒」してたかもしれませんね。
もう、色々なこと忘れて、世界中から意味不明な殺し屋が出てきたりとかも面白いですし。
いっそのこと「超能力者」が出てきたりとか。
SF路線に切り替えても面白くなりそう。
漫画みたいなことになった方が面白かったかも。
原作者漫画家ですし。
序盤良かっただけに、その後のノロノロ感がガッカリでした。
これにインスパイアされた人が「藁の楯リミックス」を作ったら面白いかも。
ハリウッドリメイクでタランティーノに憧れてる監督が作ったりとか。
戦闘機が出てきたり、「ハルク」みたいな超人が出てきたり。
ゾンビ映画ばりに日本中がパニックになるはずです。
そんなことしたら、「何だこの変な映画は」って叩かれるでしょうけど、そっちの方が自分の好みです。
もし原作の路線のまま行きたいのなら、韓国映画風に「これでもか」ってぐらい愛憎劇をやったら振り切れたかもしれませんね。
序盤の展開に「1本」、んでそこからの展開が「1歩」足りない映画でした。
オススメ度「45%」