
2009年の日本映画「しあわせカモン」です。
監督は中村大哉。
主演は鈴木砂羽。
他に石垣佑磨、今井雅之なども出演しています。
この映画2009年の映画なんですが、いわゆる「お蔵入り作品」なんです。
数日間だけ岩手県で公開されたみたいですが、そのまま何もなく「お蔵入り」してしまった作品なのです。
それから数年がたった2011年、「お蔵出し映画祭」という映画祭でグランプリを受賞しついに2013年に日の目をあびたのです。
ほんと、数多くのお蔵入りの中からよくぞこの作品を引き上げてくれたって感じです。
お蔵入りしてしまえっていう日本映画が多い中で、こういった作品がお蔵入りしているなんて、日本映画界どうかしてるぜっ。
この映画は松本哲也というシンガーソングライターの自伝をもとに作られています。
哲也の父・哲夫はヤクザ、母・扶美江はヤク中です。
哲也は最悪の環境の中産まれ、育っていきます。
フミエは薬によって逮捕され刑務所へ、そのまま病院へ。
退院後も幻覚に悩まされる日々。
その頃まだ哲也は小学生。
父は逮捕され1人になった哲也は施設へ。
というかなり厳しい現実の話です。
なんせ実話だそうですから、もう観ていてたまらなくなります。
フミエと哲夫は離婚するのですが、フミエと哲也の親子関係は続きます。
フミエは必死で薬物中毒と戦いながら、時には負けそうになり、地獄に落ちそうになり。
精神が不安定になり、入退院を繰り返す。
それでも哲也はフミエを見捨てません、もちろんフミエも哲也を捨てたりしません。
どん底なのに必死でそこに立つ2人の姿にグッときました。
何よりもこの映画は鈴木砂羽の「おかん」にやられまくりなのです。
良い女優さんだとは思ってましたが、こんなに人の心を動かす女優さんだったとは・・・。
何があっても直球でぶつかってくるおかん、そして何よりも自分が1番弱いおかん。
守ってあげたくてもまだ子供な哲也はじょじょにグレていき、暴行事件をおこすまでに。
でも哲也には夢があって、それが「歌手になること」。
ギター1本で東京に出て勝負しようとするのですが、やはり岩手に残してきた母フミエに色々問題が。
デビューも決まった哲也でしたが全てを捨ててまたフミエの元へ。
どうしようもない母親なんですが、それでも母親なんです。
そしてフミエは不器用な愛情を必死で哲也に注ぎます。
あぁ、何て無様な親子愛なんだと思いながら、自分は涙を止めることが出来ませんでした。
ラストでフミエは衰弱して死んでしまいます。
哲也の「歌手になって家たててやる」という夢はかないませんでした。
死んだ母の部屋には哲也のポスターが一面に貼られていて、こたつの上のラジカセには哲也のCDが・・・。
息子のデビュー曲を聴きながらフミエは亡くなったんでしょう。
ただただ「幸せ」になりたかっただけなんだけど、あまりに不器用すぎて簡単な幸せすらも逃げていったような気がします。
母親の息子に対する絶対的な愛というのはグッときます。
グッとくるというか、鼻の奥にツンとくるというか。
「もう何で母親ってこうなんだよ」って思ってしまうぐらい、100%の愛情で向かってくる。
この映画観ながら妙に「親孝行しなきゃ」なんて考えながら。
「なーに泣いてんだ、お蔵入りの映画に」なんて考えながら。
あー、やっぱり涙が止まらなかった映画でした。
オススメ度「55%」