2013年の日本映画「千年の愉楽」です。
監督は若松孝二、出演は寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太、佐野史郎などなどです。

この作品は2012年に亡くなった若松孝二監督の遺作になります。
若松監督はこの映画が公開される数ヶ月前に亡くなりました。
最後となった今作では「新しく生まれる命」について描かれていて非常に感慨深いものとなりました。

物語はとある海辺の町で産婆として働いてきたオリュウノオバが自分がとりあげてきた赤ん坊の人生を振り返っていくという形で描かれていきます。
オババが特に思いの強かった3人の男の物語。

3人の男を高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太が演じているのですが、実質高良健吾と高岡蒼佑で1時間ずつ使って映画は終わります。
自分が大好きな染谷将太は最後の方で少し出るだけでした。

この3人の男に共通するのは「中本の血」。
中本という呪われた一族の血を受け継いだ男たちの末路が描かれていくのです。

1人目は半蔵という男。
美しい顔だちで女性はみんな半蔵をほっとかない。
半蔵は近所に住む女という女を抱いて暮らす毎日。
しかし、そんな半蔵の悦楽の日々は長くは続かないのです。

2人目は三好という男。
喧嘩っぱはやく、真面目に人生を送れない。
ヒロポンを打ちながら盗っ人の毎日。
そんな日々をやめ真面目に暮らそうとするのですがうまくはいかないのです。

3人目は達男という男。
達男は半蔵や三好と違い真面目で優しい男。
オババのことを助けながら暮らしています。
しかし、達男も長生きは出来ないのでした。

という3人の男の物語をオババが語っていきます。
3人目の達男だけ短いのですが。

半蔵にしても三好にしても達男にしても、女がほっとけない不思議なフェロモンみたいなものを出してるんでしょうね。
男のフェロモンに我慢出来なくなる女たちというのが生々しく感じました。

若松孝二監督といえば、自分は2010年の「キャタピラー」を思い出します。
このブログでも書きましたが決してオススメは出来ないのですが一生忘れられない作品です。
吐き気すら感じてしまうほど、人間の汚さが描かれていて、観ているだけで辛くなりました。
2008年の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」も観ていてかなり辛くなる映画でした。
若松監督のパワーみたいなものがおさめられていて、自分の知っている「あさま山荘事件」のイメージをガラッと変えられました。

若松監督の映画は観ていて楽しいものではありません。
妙に心に訴えかけてくる、そして心に何かを植えつけてくるのです。
若松監督の映画を観る前はかなり気合いを入れておかないと観ながらダウンさせられてしまいます。
「ふー」と深呼吸をして、「観てやる」という意気込みが必要な映画を作る監督さんでした。
「キャタピラー」であれだけ衝撃を受け「もう2度観たくない映画」だと思ったのですが、それ以降も若松監督の映画を観続けました。
やっぱり「もう2度と観たくない」と思うのですが、新作を作れば「観ずにはいれない作品」になること間違いないのです。
若松監督の映画は若松監督にしか作れないと思います。
自分の中ではどんな監督よりも「きつい映画を作る人」でした。
観たくないから観ない作品ではなく、観たくなくとも観ずにはいられない作品を作る男、若松孝二。
ご冥福をお祈りします。

オススメ度「50%」