2011年のアメリカ映画「デタッチメント 優しい無関心」です。
日本では劇場未公開でして、2013年にDVDが発売されています。
エイドリアン・ブロディ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ルーシー・リューなどが出演しています。
原題の「Detachment」は「分離」という意味です。
邦題の後ろについてくる「優しい無関心」は余計です。

1人の教師を通して、学校や生活に関する不安や不満などを切なく描いています。

主人公ヘンリーは臨時教師としてある学校にやってきます。
そこは荒れた学校で不良ばかりが通っています。
生徒たちは先生に暴言を吐き、授業はなりたたず、学校として成り立っていません。

「GTO」みたいにこの不良たちをねじ伏せて愛と感動のスクールドラマにはならないのがこの映画です。
リアルな「GTO」とでも言いましょうか、所詮は先生、何もできないんだという悲しい物語なんです。

ヘンリーはエリカという売春をして暮らす少女と出会います。
不憫に思ったヘンリーは自分のアパートに連れていき一緒に暮らすことに。
エリカは次第にヘンリーに心打ち解けていくのです。

このエリカを演じたサミ・ゲイルという女の子がとても印象に残りました。
少年のようなショートカットがよく似合うボーイッシュな子で笑顔が素敵でした。

ヘンリーは学校の問題だけでなく、自分の過去にも悩んでいます。
更には祖父が病気で入院しているし、家にいるエリカのことも心配です。
もう頭の中は整理できない程の悩みの渦でいっぱいになっていくのです。
更には受け持ったクラスの女の子の心の闇を聞かされます。
その子のことをどうすることも出来ず、その子は学校に来なくなります。
ヘンリーが臨時教師最後の日、その子は学校にやってきて、真っ黒いパンケーキを食べ自殺します・・・。

ヘンリーはエリカを児童施設に引き取ってもらい、エリカは泣きながら連れていかれます。
もう何もかも背負いこむことが出来なくなったヘンリー。

行き場の無い悲しさに打ちひしがれる先生たちがとても悲しかったです。
「毎日、自分の人生をダメにしていく子たちを見るのは辛い」
「自分には何も出来ない」
「助ける方法すら分からない」
「日々の生活でもう・・手一杯」

日本の学校でも先生への風あたりは強く、がんじがらめのルールの中、難しい年頃の生徒たちと向き合わないといけません。
やりすぎると問題になり、放置しても問題になり。
生徒との正しい距離感がよく分からないまま、子供達の心はどんどん病んでいくのです。
「学校」というものが今どうあるべきなのか、先生は生徒とどう接するべきなのか。
そういうことを考えさせられる映画でした。

先生自身が前に進めないでいるこの現代社会に、生徒たちはたった1人で前に進むことを強いられているのでしょう。
まるで細い細い1本のロープの綱渡りのように・・・。

オススメ度「61%」