2011年の日本映画「死にゆく妻との旅路」です。
清水久典原作の本をもとにした映画で、清水久典自身の体験談による実話です。
主演は三浦友和と石田ゆり子、ほぼこの2人だけで物語は進みます。

三浦友和演じる「おっさん」が借金まみれになり家を出るところから物語は始まります。
知り合いの保証人となり4000万円近くの借金を背負い、おっさんは現実逃避をし3ヶ月行方をくらまします。
その間待ち続ける石田ゆり子演じる妻のひとみ。
ひとみはガンにおかされ手術をしましたが、3ヶ月以内に再発すると言われていました。

3ヶ月後帰ってきたおっさんは、仕事を探すためまた出かけることに。
ひとみはまた置いていかれると感じ、おっさんについていきます。
ここからおっさんと妻ひとみの旅が始まるのでした。

手元に50万円の現金、移動は青いミニバン。
2人は色んな街を旅して、そこで仕事を探します。
しかし50すぎたおっさんに仕事はなく、ひとみも少しずつ弱っていきます。
おっさんは病院へ連れていくのですが、ひとみは病院は嫌だといい逃げ出します。

ここから2人の職探しの旅は現実逃避の旅に変わります。
病で弱っていくひとみを看病し、手元の金もどんどんなくなり、車での生活。
半年以上その生活を続け、ひとみは車の中で死にます。
おっさんは逮捕され・・・映画は終わります。

これが実話なので観るのが非常に辛い映画でした。
どんどん弱っていく妻を車の中で看病しながら生活する夫の気持ちとはどんなだったのでしょう。
警察は「何故もっと早く病院へ連れていかなかったのか」と言いますが、結果しか知らない警察には何1つ理解できなかったのでしょう。
死んでしまうまでに2人に何があったのかは2人にしか分からない。
2人はただ愛し合い、この道を選んだということでしょう。
しかしそれが日本の法律では違法となってしまう。
「ただ2人でいたいだけだった」ということも他人には理解出来ないことなのです。

考えさせられるし、実話だと思うと胸が苦しくなるし、もし自分だったらと考えると恐くなるし。
観ていて辛いし痛い映画です。
映画とは楽しいだけではなく時にこんな辛い現実を見せてきたりもします。

妻役の石田ゆり子さんは自分が一番好きな女優さんです。
そんな石田ゆり子さんがどんどん弱って死んでいくというだけで悲しい気持ちになりました。
何度も何度も「もし自分が夫だったら」と考えてしまい、苦しくなりました。

きっと自分だったら恐くて病院に連れていくでしょう。
例えそれを妻が嫌がっても、自分は病院へ連れていくでしょう。
これも1つの現実逃避かもしれません。
「やることはやった、責任は果たした」という言い訳を作るための現実逃避。
人生において「もし」や「やりなおし」は出来ないのですが、2人が「もし」幸せな結末を迎えるためにはきっとこの映画のスタートよりもっと前に重大な分岐点があったのでしょうね。

逮捕された「おっさん」こと清水久典氏は今もがんばって生きておられるそうです。

オススメ度「59%」