
日本で2010年に公開されたアメリカ映画「ラブリーボーン」です。
大ヒット小説をもとにした映画で、製作総指揮スティーヴン・スピルバーグ、監督は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンという豪華タッグです。
物語は主人公スージーの「私は14歳で殺された、1973年12月6日のことだ・・・」というセリフから始まります。
その言葉どおりにスージーが殺されてしまうシーンが始まり、スージーは死んでしまいます・・・。
しかし、死んだはずのスージーは現世と天国の狭間のような場所にいてそこから現世を見ることが出来るようになります。
犯人は捕まらず死体も発見されませんが、スージーは何とか家族達とコンタクトを取ろうとします・・・。
という感じで序盤はかなり悲しい始まりです。
最初に「私は14歳で殺された」という宣言から始まるので観る側は「スージーはもうすぐ殺される・・・」と覚悟しながら観るのです。
片思いの男の子レイからデートの誘いを受けたその日、スージーは夢見た初キスをすることなく殺されます。
そこまではとても悲しいのですが、そこからスージーのいるあの世の世界というものがとても明るく描かれています。
幻想的であり、今まで見たことのないような不思議なファンタジーワールドです。
さてさて、この物語はとても悲しく痛々しい殺人事件なのですが、そこを単なるサスペンスとして描いていないというのがこの映画の特徴です。
もちろん殺されたスージー、捕まらない犯人、という軸はあるのですが、それよりもスージーが死んでから感じる家族への思いだったり、家族がスージーに思うことだったりがメインとして描かれています。
そこに独創的なファンタジック描写が加わっていき何とも不思議な映画となっています。
そしてこの映画で自分が思った「陰と陽」の部分ですが、陰は言うまでもなく犯人のジョージです。
一見真面目そうに見える近所のおじさんがスージーを殺した犯人で、映画の中では「犯人は誰か」という部分は隠さず序盤で明かされています。
つまり最初から犯人として観客は彼を観ているので、怪しい行動もわざとらしくなり笑顔もバレてしまうのです。
その難しい役をスタンリー・トゥッチが演じているのですが、観ているだけで映画の中に入っていってブン殴ってやりたくなるぐらい不気味で腹のたつ殺人鬼を演じています。
この演技でスタンリー・トゥッチはアカデミー賞の助演男優賞にもノミネートされました。
それが「陰」の部分なら、次は「陽」の部分。
それはスージーのおばあちゃんのリンです。
現世ではスージーがいなくなり悲しみにふける家族にあってリンだけは結構気ままに明るく生きています。
適当で雑な性格ですが、それを写すことによってこの映画が不気味に暗くなりすぎずバランスをとっていたと思います。
他にもスージーと同級生のルースは、住んでる家庭も性格もま逆、見た目も金髪と黒髪で非常に対照的な描き方をしています。
生と死、天国と現世、陰と陽の部分、主人公と友達、などなど多くのものを比較して表と裏というものを強く表現していると思いました。
特殊なサスペンスファンタジーという感じの映画ですが、一番の見所は主役のスージー演じたシアーシャ・ローナンです。
数年前「つぐない」で13歳という若さでアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたこともあります。
彼女が主役のスージーを演じたことの大きさがこの映画を全てだと思います。
少し反抗期を迎えたかわいらしい少女、明るく前向きなんだけどどこか不器用さもある、そんなスージーが主役だからこの映画は成り立つんですね。
「私は、スージー・サーモン。お魚みたいな名前でしょ。1973年12月6日、私は14歳で殺された。これは、私が天国に行ってからのお話。」
オススメ度71%