
アメリカで「District 9」というタイトルで2009年に公開され、衝撃のプロモーションムービーで話題となり、日本でも2010年の4月に「第9地区」というタイトルで公開された映画です。
自分はまだ邦題が決まる前から観たくて観たくてウズウズしてた映画でした。
その頃は原題の「District 9」で呼ばれてたのですが、英語の予告編観てかなりワクワクしたのを覚えています。
監督はニール・ブロムカンプという31歳の若い監督で、この映画が長編映画ではデビュー作です。
宣伝とかで「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンの名前がデカデカと告知されてましたが、ピーター・ジャクソンは製作のみです。
さぁ無用な説明は終わらせて、中身について語りたいと思います。
物語は、エイリアンが地球にやってきて住みついてしまってから20年がたった・・・というところから始まります。
その住みついた場所は南アフリカ共和国のヨハネスブルクです。
そこに「第9地区」という地区を設け、エイリアン達が隔離されて暮らしています。
しかし、あまりにエイリアン達の傍若無人ぶりがひどすぎて、別の区画に移そうということでジャーナリストがカメラを回しながらその模様を撮り始める・・・という感じでスタートします。
フェイクドキュメントとしてすすむのですが、このエイリアン達がひどいんです。
すぐ暴れるし、人は殺すし、生活自体も汚いし、見た目もグロテスクだし・・・。
そりゃ現地の人も怒るわ・・・って思うのですが、そのエイリアン達を扱う人間側もだいぶエイリアンに対して偏見を持っていて、必要以上に見下しています。
かなりどぎついブラックジョークのオンパレード、笑うに笑えない展開。
真面目な映画が好きな人が観たら、開始10分で観るのをやめてしまうでしょう。
しかし、このジョークとリアリズムの狭間のバランスが絶妙で、観ているうちに引き込まれていきます。
大体ここらへんまでが映画開始から10~20分のところだと思います。
ここからがこの映画の更に凄いところで、何が凄いのか、その展開や映像は是非自分の目で観てください。
自分は単に2時間エイリアン撤去の映像に密着するフェイクドキュメントだと思って観始めたので、度肝を抜かれました。
それぐらいこの映画はほぼ情報を仕入れず観た方がおもしろいと思います。
「なんかエイリアンに取材に行く映画でしょ」ぐらいの感じで観始めた方が最高です。
さて、この映画、なぜ舞台が南アフリカのヨハネスブルクなのでしょう?ってところに少し触れたいです。
監督のニール・ブロムカンプがヨハネスブルク出身であるということが最初のきっかけではありますが、そこにエイリアンを隔離し差別して生活してるという設定。
そうです、この映画は「アパルトヘイト」からの影響なのです。
アパルトヘイトとは1990年代まで南アフリカで実際に行われていた人種差別のことで、白人と白人以外を分けて生活するというものです。
それによりカラードと呼ばれる有色人種、とくに黒人の人達はひどい扱いを受けて暮らしていました。
つまり、この映画は人間=白人であり、エイリアン=黒人という設定でもあるのです。
黒人は野蛮で恐い人種だと思い込む白人は必要以上に黒人を遠ざけていたあの頃を、もし違った視点で観てみたら・・・というこの映画のメッセージでもあります。
実際、この映画はエイリアンが野蛮で恐い生き物だという見せ方から始まるのですが、観ているうちに人間がいかに身勝手で自分達の価値観を他の生き物に押し付けているのかが分かります。
しかし、これだけで終わらないからこの映画は凄いんです。
フェイクドキュメントからアパルトヘイトを匂わす設定、そして、物語は急展開へ・・・。
ここからは完全にSF映画として突拍子の無い方向へ進んでいくストーリーにただただポカンと口をあけて観ている状態になります。
ジェットコースターのように次々と休まず展開していくので呆れるほどおもしろいです。
細かくもっと語りたいのですが、長すぎて誰も読みたくないと思うし、これ以上を語るには映画のストーリーを書かざるえないので、やめておきます。
この映画は去年のアカデミー賞の作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞にノミネートされています。
有名な役者さんは誰1人出ていませんし、制作費も30億円とハリウッドにしては抑え目です。
が、去年公開されたどの映画より爆発的なインパクトがあります。
「映画って凄いなぁ」と10代の頃感じて映画を観始めた私ですが、アラサーになった今またあの頃と同じように「映画って凄いなぁ」と思わせてくれる1本でした。
オススメ度95%