俺はここ数ヶ月、終の棲家を考えた。
◆京都で戸建て?
彼女の意向を尊重し今後も京都に住む場合を想定したら、伏見稲荷近くのマンションで年100万円の賃料を払い続けるより、小さい戸建て住宅を買う方がいいのかなと考えた。
12月中旬、大手賃貸アプリで検索したら俺の好きな「伏見港」
の近くに古い戸建て住宅(3K、33m2)が「非常に安い価格」で掲載されていた。
伏見港は、豊臣秀吉が大阪(商業)と京都(朝廷)の間に拠点を置く為の物流のかなめとして作らせた内陸の港で、周囲には今も運河が残っている。
ついでに売出し中の戸建て住宅の内見に行った。
建物は築50年近いようだが、建屋が古いだけならばDIYで時間をかけてリフォームすればいいので、大きな問題は無いと思っていた。
しかし、その時不動産会社の担当者から衝撃的な事実が!!
不動産会社担当者 「リフォームの予算はどれぐらい考えていますか?」
俺 「基本は0円。必要ならDIYでリフォームします」
担当者 「それは困難ですね。
実は2箇所に『シロアリ』の被害が確認されていまして・・・」
俺 「えっ! それは確定なんですか?」
担当者 「はい、残念ながら・・・。
売出し価格が400万円と安いので、あるリフォーム業者が自分で購入して賃貸で回そうと考えたようで、先月内見に来ました。
彼らプロの目で判断して『確実にシロアリに食われている場所があるので、対策には最低でも200万円、多いとその倍の費用は必要になるから、購入は止めた』との事でした・・・」
俺 「えー! それを先に言ってよねー!!
400万円で購入できても、白アリ対策で400万円。更にリフォーム費用か、メリット無いよね。トホホ」
こうして「伏見での戸建て購入計画」は幻と消えた。ハハ。
◆南の島に転職?
その頃、高校時代の同級生TからLineで沖縄情報が来た。
Tは昨年定年退職し、現役時代に購入した何軒かの小型マンションを賃貸に出し、その副収入で遊んで暮らしている。12月から1ヶ月は沖縄に滞在しているようだ。
T 「沖縄は暖かくてええでー。どやー!
沖縄本島は:長所は、ホテルや食い物屋が充実してる。
短所は、人が多すぎ、海も汚れているし、不動産は既に高騰していて手が出ない価格や。
隣の宮古島は:長所は、まだ十分開発されていないので、観光客も少なく、海もきれいや。
短所は食い物屋や医療施設が不十分。する事が無く退屈やー」
俺 「そうなんや。宮古島に500万円位で買える小さい古民家はありそうか?」
T 「意外と空きの古民家が少ないな。マンションは既に値上がりしてるから、当面無理そうやな」
◆宮古島へ転職?
1月中旬、知人の紹介で東京のスタートアップ企業W社に面接に行った。
「新規事業で、宮古島に事業所を新設する」ので現地責任者を募集しているそうだ。
意外にも、俺の履歴書にある「上海で10年間 + 京都で7年間 旅行関連の新規事業立上げに参加。英語:可。現在は某うどん屋で麵生地作り職人のアルバイト中」という部分が気に入られたようだ。(笑)
面接日以降、色々詳細を交渉して、2月初旬にW社から内定通知が来た。
とりあえず、うどん屋での麺生地職人のアルバイトは「2月末で終わり」にする事をお店に伝えておいた。
しかし、俺は「彼女にどのように伝えようか?」と数日間迷っていた。
2月中旬の日曜日、天気がいいので、ドライブにいった。
ランチは彼女の要望で「ちいかわとコラボキャンペーン」をしているくら寿司を食べ、食後にスーパーで食材を仕入れた。
夕食は彼女がバレンタインデーとして「ローストビーフとハンバーグ」を作ってくれた。
食後に彼女の希望で「海街ダイアリー」の映画をAmazon primeで見た。
この映画を見た後、何故か俺はスっと彼女に説明できる気持ちになった。
彼女 「いい話だよねー!」
俺 「そやなー。
俺もこれからは自分のやりたい事をやろうと思う」
彼女 「??」
俺 「先日、次の仕事が決まった。沖縄県宮古島での新規事業の現地責任者で、久しぶりにフルタイムで働く気になってる。
契約期間は5年間。その後は京都に戻るか? 沖縄に残るか? 或いは、他の場所に移るか? は、その時に考えるので、取りあえずこの伏見のマンションは3月には引き払う事になるな」
彼女 「?? Kさんが新しい仕事でやる気になった事は前向きに応援したいけど。
でも、突然言われても・・・。
私はどうすればいいの?」
俺 「そうだよな。ハルには幾つかの選択肢があると思う。
A. 仕事を優先したい場合、京都に残りお気に入りの今の総合病院での勤務を続ける?
B. 家族を優先したい場合、暫く東北に戻り、ガン手術に成功したお母さんの近くにいて支えてあげる?
C. プライベートを優先したい場合、俺と一緒に宮古島へ行く?」
彼女 「えー、そんな事すぐに決めれないよ・・・」
俺 「そうだね。すぐに決める必要は無いから。
ゆっくり考えて、ハルの思うようにすればいいよ」
その後数日間、ずっと彼女の機嫌は悪かった。