ダイエットと筋トレの為、俺は配送ドライバーのアルバイトをする事にした。

 

◆研修終了:

 通常1週間の研修期間を俺は1ヶ月に延長してもらっていた。理由は研修初日に階段で荷物を運んでいて右膝を壊したからだ。研修期間は運ぶ軒数を4軒に減らしてもらい代わりにアルバイト料は20%カットとなる。

5月末日でその研修期間も終了し、6月1日からは他のベテランドライバー達と同様に毎便5軒を配送している。

6月下旬から毎日30℃を超える猛暑の中、約10kgの荷物を1,2個担いで階段を数往復しているので、「目標体重64.5kg」はとっくに達成し、

今では「夢の63kg」台に迄到達している(笑)

 

 

◆色々なお客様との出会い1 / 全盲のAさん

 このアルバイトをしていると色々なお客様との出会いがある。

先日配送したAさん(男性、40才前後、マスク無し、マンション1階)は全盲の方だった。

配送前にN班長(男、60代、元大手運送会社出身、185cm超の大男)からアドバイスをされていたので、玄関口で丁寧に対応した。

俺 「こんばんわ。IOスーパーです。3箱の荷物はどこにおけばいいですか?」

Aさん 「はい、足元に置いてもらえれば大丈夫です」

俺 「了解しました」 各箱にレジ袋に小分けされている荷物を1つづつ取出し、中身を説明した。

俺 「これは常温で、中に調味料類が入っています」 説明しながらAさんに手渡しした。

Aさん 「分かりました」 Aさんはその袋を自分の足元の正面に置いた。

俺 「次は冷蔵で、中に魚の切り身等が入っています」 これも説明しながらAさんに手渡しした。

Aさん 「分かりました」 Aさんはその袋を自分の足元の左側に置いた。

俺 「次は冷凍で、中に野菜類等が入っています」 これも説明しながらAさんに手渡しした。

Aさん 「分かりました」 Aさんはその袋を自分の足元の右側に置いた。

こうして10個位のレジ袋全てを渡し終わった。

俺 「以上になります」

Aさん 「丁寧に対応してくれてありがとうございます。とても助かります」

俺 「それはよかったです。失礼します」

 

通常より時間2倍以上時間がかかったが、何だか「社会の役に立てているやんけ」という自己満足があった。(笑)

 

 

◆色々なお客様との出会い2 / 缶コーヒーのBさん

 昨日配送したBさん(女性、70代、マスク無し、戸建て住宅)宅は、車道から玄関口まで10段位階段を登る構造になっていた。

気温38℃の炎天下に箱(約10kg)2個と水のケース(約12kg)4箱を上げるのは結構疲れるなーと思いながら呼び鈴を押した。

 

俺 「こんにちわ。IOスーパーです。

  6箱の荷物はどこにおけばいいですか?」

Bさん 「すみませんが、タタキまであげてもらえますか」  申し訳なさそうにBさんが要求した。

俺 「はい、分かりました」 

2個づつ持ち、車と玄関まで3往復したら、既に汗だくだ。

俺 「以上になります。失礼します」

Bさん 「重い荷物を、すみませんね。

  これ良かったどうぞ」 Bさんが冷えた缶コーヒー「レインボーマウンテン」

を1缶くれた。

俺 「ありがとうございます」 丁寧にお礼して車に戻った。

 

俺は通常「コーヒーや牛乳」は全く飲まないが、折角のご厚意なので車中で久しぶりに缶コーヒーを飲んでみた。

猛暑の中での冷えた1缶が五臓六腑に染み渡ったみたいだ。

 

 

◆色々なお客様と出逢い3 / 入れ墨のDさん:

昨日配送したCさん(男、50代、マスク無し)はマンション3階でエレベーターが無い。

1週間位前にも1度不愛想なCさん宅へ配送したが、半そでTシャツの下にはびっしりと入れ墨が見えていた。

今日も炎天下に2箱(約20kg)を担いで階段を3階まで上がり、呼び鈴を押した。

 

俺 「こんにちわ。IOスーパーです」

ドアが開いて、仏頂面のCさんが出て来た。前回と同じく無言だった。

俺 「こちらは、冷蔵になります」 箱から小分けされたレジ袋を取り出して手渡しした。

Cさん 「・・(無言)」

俺 「こちらは、常温になります」 次のレジ袋を取り出して手渡しした。

Cさん 「・・(無言)」

俺 「こちらは、冷凍になります」 最後のレジ袋を取り出して手渡しした。

Cさん 「・・(無言)」

俺 「以上になります。失礼します」

Cさん 「ごくろうさま」 

意外にもCさんからお礼を言われた!

 

俺は何だか「世の中に役立っている」ような気がして足取り軽く階段を下りた。(笑)

 

 

◆色々なお客様と出逢い4 /コロナ陽性者Dさんとの接触:

 昨日の配送で18時配送の枠にちょっと意外なコメントのついたお客様がいた。

「コロナ陽性につき、到着時に電話いただき、非対面での配送をお願いします」

念の為、N班長に確認した。

 

俺 「こんなコメントがついていますが...」

N班長 「ああ、そうやな。まあ、書かれている指示通りにやれば、非対面やから問題ないやろ」

俺 「そうですよね。ハハ」

 

20分後、車で客先に到着し、指示通り電話した。

俺 「こんにちは、IOスーパーです」

Dさん 「ご苦労様です」

俺 「ご指示通りに、荷物を玄関口に置かせて頂きます」

Dさん 「宜しくお願いします」

俺 「了解しました」


俺は荷物2箱を車から降ろし、台車でDさん宅の玄関迄運んだ。玄関口で箱からレジ袋を1つづつ出していると、何故か玄関ドアーが開いて、Dさん(男、60代、マスク着用、顔色悪い)が出て来た。俺は驚いたが、手袋したままで淡々と荷物を手渡しした。

 

俺 「こちらは、冷蔵になります」 箱から小分けされたレジ袋を取り出してDさんへ手渡しした。

Dさん 「はい」

俺 「こちらは、常温になります」 次のレジ袋を取り出して手渡しした。

Dさん 「はい」

俺 「こちらは、冷凍になります」 最後のレジ袋を取り出して手渡しした。

Cさん 「はい」

俺 「以上になります。失礼します」

Dさん 「ご苦労様です」 Dさんからもお礼を言われた。

 

俺は車で数分移動し、最寄りのコンビニに行き、すぐに石鹸で手洗いし、マスクも新品に代えた。

そして、配送ドライバー様のグループLineを使って、N班長に確認のメールを出した。


俺 「N班長、

大至急、確認事項です。
状況:
「コロナ陽性で非対面を希望していたD様宅」へ配送に行きました。
客先の要求通り、「最初に電話して玄関口に起きますと伝え」ました。
問題点:
玄関口に荷物を置いていたら、家から男性(60代?)が出て来て、先方の要望で、結局「手渡し(私は手袋してました)で全ての荷物を納品」しました。
対策:
荷物搬入完了後、最寄りのコンビニのトイレで手を洗剤で洗い、念のためマスクを新しいものに代えました。
確認です:
このまま「次の配送」を継続してもいいですか?」

 

3分待ってもN班長から返事が来ないので、別の場所へ配送中のN班長の携帯に直接電話をして、状況を説明した。


N班長 「そうか、その男の人が陽性者なんか?或いは、その家族なんか?」

俺 「その場では確認できませんでした」

N班長 「まあ、そんな短時間では感染しないと思うけどな・・・」

俺 「では私はこのまま配送を続けてもいいんですね?

  もし、私が感染していて、次のお客様に感染させた場合、それはIOスーパーの責任になりますよ」

N班長 「うーん。100%大丈夫とも言えないしなー。

  IOのマネージャーへ電話して、状況を説明して、判断してもらってくれ」

俺 「了解しました。IOのマネージャーに電話します」

 

俺はすぐに指定されたマネージャーのPHSに電話した。

俺 「配送ドライバーのイノダです。マネージャーですか?」

Kさん 「いいえ、マネージャーはもう帰宅しました。私は担当のKです」

俺 「実はxxxxxの状況なんですが。

  私がこのまま配送を継続してもいいのか?IOのマネージャーに判断してもらうようにと、N班長から言われまして」

Kさん 「了解です。マネージャーに確認して、折り返します」

俺 「宜しくお願いします」

 

俺はコンビニの駐車場で待っている間に、Dさんに直接電話で確認してみた。

結果をグループLineに上げた。

 「N班長、

念のため、D様に電話確認しました。
結論
感染者はご本人(先ほど受け渡しした男性)で、
現在療養3日目で、回復に向かっている、
との事です。」

 

10分後にKさんから電話が来た。

Kさん 「マネージャーに事情を説明しました。マネージャーの判断では、

  15分以内の場合は『濃厚接触者』にならないので、そのまま配送を続けても問題無い。

  念の為、あなたの配送会社のY社長にも最終判断をしてもらって下さい、との事です」

俺 「了解しました。Y社長にも確認します。ありがとうございます」

 

俺はすぐにY社長(男、30代後半、元ベテランドライバー)に電話して状況を説明し、最終判断を確認した。

俺 「お疲れ様です。お食事中すみませんが、急ぎの電話です。

  xxxの状況なんです」

Y社長 「はい、さっき、N班長から報告を受けています」

俺 「そうですか。

  IOのマネージャーの判断では『15分以内の場合は濃厚接触者では無いので、配送を継続しても大丈夫』との事で、

  最終判断はY社長に確認してから、との指示です」

Y社長 「IOがその判断なら、配送を継続しても大丈夫ですよ。

  万が一、体調に変化があったら、都度私に報告して下さい」

俺 「了解しました。判断ありがとうございます」

 

電話を切ってすぐに、俺は結果をグループLineに報告した。

「N班長、

残りの配送を継続する事になりました。
IOの判断、
15 分以上接触していないので。濃厚接触者では無い!
Y社長の判断、
IOの判断に従う」

 

この後、2軒の客先に荷物を配送し、IOに戻ったのは20時20分だった。

N班長も丁度そのタイミングで別の配送から戻って来たので、結果を報告した。

 

N班長 「まあ、俺も過去に2件陽性の人に配送した事があったけど、

  短時間なら問題なかったわ。ハハハ」

俺 「そうですよね。ハハ。

  (先にそれを言ってよねー・・・)」

 

こうして、京都市内で今年の最高気温が38℃を超えた、アツイ1日が終わった。

 

19時の休憩時間にDさん対応で夕食を食べられなかった俺は、帰り路に魁力屋に立ち寄り「辛みそラーメン+唐揚げ」


を食べてアツイ一日を終えた。