「Kenさん、終わったら昼飯食いましょうよ」
そだね。
つったって、もう3時半だ昼抜きだ。
俺が二つ返事で「そだね」と言う担当さんは少ない。
付き合い10年以上、職業上の苦楽を共にした彼だからこそ。だ。
『おされぇ~』なラーメン屋で二人共無口。
「なんで煮干しなんすかねぇ・・」
煮卵は美味かったけどね。
本来下品な食い物であるラーメン屋がどこも禁煙てのが納得行かねえ。
これってさ、
俺の記憶が正しければ『国が売ってたもん』じゃなかったか?
「コーヒー飲んで一服しましょう」
そだね。
「Kenさん独身じゃないですか」
そだよ。
「離婚も調停も経験したんですよね?」
そだよ。
親権のだけどね。
「俺の仲間が不倫してるんですよ」
(ほんっとに皆さん唐突にっ。でもって何で俺に? 流行ってんの?)
「そいつと飲む度に自慢話、人妻はエロいぞぉ。って」
「勧められるんですよ」
「どうなんすかねぇ」
うーんん。
魅力があるのは解る。
『一盗二卑三妾四妓五妻(いっとうにひさんしょうしぎごさい)』て言うからね。
「なんすかそれ?」
後でググって。
あのね。
向こうの旦那にバレて、
離婚になった場合、減額交渉して200万。
離婚せずに再構築する場合でも100万。
その他に弁護士費用が要る。
自分の行為と、その相手に、それだけの価値があるか? だね。
そのリスクを侵してまで手を出す相手か。
「俺、100万も無いなぁ~」
バレた時「俺の方が幸せにするから俺にくれ」て言うだけの気概があればいいと思うけど。
相手は、手の平返すぜ。
「え。そうですかね?」
今までの生活と経済的基盤を、ちゃらにしてまで一緒に居たい。と思ってくれるかね?
ほとんど裏切るでしょ「お互い遊びだ」って。
そんな遊びに付き合える?
「なっるほっどねぇぇ~」
俺はね。
所有権の付いた物と人には絶対手を出さない。って決めてる。
それは泥棒だから。
「Kenさんすげえーっ」
「真理だ」
違う。
経験則。
「お互い別れてからやればいいんですよね」
そだね。
未来を想像出来ない相手と一緒に居るのは、人生の無駄でしかないからね。
「Kenさん・・・すげえよ」
「それも経験則ですか?」
ん?
これは受け売り。
読んだ本に書いてあったの。
「・・・・・」
「あ、でもさ」
ん?
「俺が浮気して相手の旦那に慰謝料、請求されるじゃないですか」
うん。
そだよ。
「うちの嫁が俺の浮気相手の女に慰謝料、請求すれば・・」
「うちの家計的にはプラマイゼロじゃないですか?」
・・・・・。
頭、いいな・・
ぼんやりと思い出す。
フラッシュバックではなく。
かつて。
俺はそういう人だった。
後悔は無い。
しなければ良かった。とは思わない。
感謝すら、してる。
けれど、
俺は色んなものを間違えた。
俺が今、そう思えて、こう話せるのは、
あの頃とは比べ物にならないからだ。
