桜並木が流れる。
うらうらとした午後、電車のシートに座って眺める。
満開だな。
別にどうでもいいけど。
部活帰りの娘と郊外の駅で待ち合わせ。
「相変わらずおしゃれって言うか・・」
「若いって言うか」
おお。
そっか?
お袋の葬式以来だ。
ぎこちないジャブの応酬も昼飯を食うまで。
こいつはやっぱり俺の娘だわ。
なんだこの『しっくり来る感』は?
「このブランドは、ここと横浜にしか無いの」
『麦藁の一味』試着。
諭吉が飛ぶ飛ぶ飛ぶ飛んで行く。
ま、父親らしいことを放棄してしまったから(じゃねえよ「放棄させられた」んだよ)仕方無いよな。
けど、
UFOキャッチャー(俺は天才)で取ってやった『くまプー』を一番喜ぶって・・
春の陽射しに「きらきら」光る肩までの髪。
俺の体を触った時に、元家内と同じ匂い。
DNAレベルなんだろな。解っていても、
くらくらした。
懐かしい匂い。
夜になって風が出て寒くなった。
送ってやるよ。
乗ってきな。
ガレージ開けるから家で待ってな。
娘がこの家に入るのはいつ以来?
「あー」
「なっつかしぃいー」
「この家の匂いだー」
玄関に並んだ彼女の靴を見て、
「あんたねぇ~」
あ。
うん。
彼女来るから・・
そのままキッチンへ(女ってすごいね)
「男の一人暮らしじゃないよね?」
(あわわわ・・)
帰りの車の中。
買い物くらい、いつでも付き合うぞ。
「バレるとさぁ」
「パパと会ってるって」
そうなのか。
「うん」
「それはそれ、これはこれだよねぇ」
そうなのか。
今だにそうなのか。
『俺』
『俺を連想させるもの』
拒絶反応。不機嫌になるそうだ。
別居して、離婚して、どんだけ経ってんだよ?
あなたが望んだことだろ?
全て望み通りになっただろ?
何をこだわることがある?
俺の方がいい場所に居るんだな。
娘に感謝しなきゃな。
今日。
またひとつ、
抜けた。と言うか、
判った。と言うか。
「何が?」と聞かれると判らないけど。
傲慢な言い方だけど、
俺はもう、許しちゃってるんだな。
『折り合いを付けた』のか。
