皆様、最後のご乗車有難うございます!!
長きにわたり続けて参りました最長片道切符の旅も、いよいよ本日、その終焉の時を迎えます。
朝7時半、宿としていた快活クラブを後にし、駅へ向かいます。駅地下の吉野家で納豆定食を注文。
思い返せば旅立ち2日目の朝、博多でもまた納豆定食をいただいたものでありました。巡り巡って同じ朝食に辿り着くとは、これもまた我が旅の運命というものでございましょう。
札幌9時10分発、快速「エアポート27号」に初乗車。
列車は軽快な足取りで小樽へ向かい、およそ30分で到着いたします。

せっかくなら小樽の街を散策したいところ。しかし外は本降りの雪。吹き付ける風は3月とは思えぬほど冷たく、やむなく駅構内のファストフード店へ避難し、温かなコーヒーでひと息つくこととなりました。
そして、10時57分発の倶知安行き普通列車に乗車。

パウダースノーを目当てに訪れた海外からのスキーヤー十数人も乗り込み、車内は国際色豊かな賑わいを見せていた。
北海道最後の日本海を眺められるものと期待しておりましたが、残念ながら空模様はそれを許してはくれません。
仁木を過ぎる頃、車窓の主役は日本海から山々へと移り変わります。
右手に広がる銀山の山並み。その景色たるや、まさに白銀の世界。見渡す限りの雪原が春の日差しを浴び、無数の天然ダイヤモンドを散りばめたかのように煌めいております。

その中を力強く進むディーゼル車。
唸りを上げるエンジンの響きは、風雪に立ち向かう無頼の浪人の雄叫びにも似て、実に頼もしく耳に響くのであります。
12時16分、列車は定刻どおり倶知安へ到着。
すると
雲間を割って姿を現したのは、蝦夷富士こと羊蹄山。
残雪をまとったその雄大な姿は、まさしく北の大地の王者。威風堂々たる山容に、思わず見惚れてしまいます。
しかし列車がさらに進むにつれ、景色は再び表情を変えてゆきます。
蘭越(らんこし)、熱郛(ねっぷ)‥
民家もまばらな深山幽谷の世界であります。
実は、この旅から約4週間後の3月31日、熱郛―目名間で盛土崩落が発生し、不通となっておりました。
幸い4月13日に運転は再開されましたが、その知らせを耳にした時、ふと考えさせられたのであります。
小樽から長万部までの函館本線山線区間は、北海道新幹線札幌延伸後、廃止となる予定。
さらに長万部から新函館北斗までの並行在来線も、その将来は決して明るいとは言い切れません。
今こうして乗車しているこの路線も、いつの日か歴史の一頁となるのかもしれない…
そんな思いが胸をよぎるのでありました。
そして、旅人の最長片道切符の旅も、いよいよ幕を下ろそうとしております。
頭の中では、終焉を告げる鐘の音が静かに鳴り続ける。
嬉しいような、寂しいような。
複雑な心境の中、これまで経験してきた艱難辛苦の旅路が、まるで走馬灯のように脳裏を駆け巡ります。
車内アナウンスが「次は終着.長万部長万部でございます‥」刻一刻とゴールに近づく。
元鉄道オタクとして、最後に果たさねばならぬ使命が残っているのであります。
それは、下車印を受け取ること。
列車が終着駅へ到着し、乗客たちが次々と降りてゆく中、私は静かに立ち上がりました。

ホームへゆっくりと一歩を踏み下ろす。
頬には一筋の涙…

跨線橋を一歩、また一歩と踏みしめながら改札へ向かいます。
「下車印をお願いします。」
すると駅員は静かに一言
「切符は回収いたします。」
え!?・・ちょっと待って下さい。
旅人は慌てて、多経路乗車券別紙1~3と緑色の乗車券を写真に収めます。
長き旅を共にした相棒との、最後の記念撮影であります‥
そして再び駅員へ手渡し、静かに改札を抜けました。

鉄路を越え、幾多の街を巡り、幾多の人々と景色に出会った青春をたどる旅。
その終幕に、一首
〽幾千里 鉄路をたどり 今日終る
最長片道 切符の旅路かな
――完






























































