タッチ&ゴーアラウンド  その② | 時計をはずして

時計をはずして

心理カウンセラー 作詞家 せきけんじ

タッチ&ゴーアラウンド  その①のつづき

「ま、ま、ま、マヂで飛ぶんですか?」

機内で案内してくれたアテンダントに尋ねる。

ニッコリ無言でほほ笑むアテンダント。

(迷惑な客だわー。嫌なら乗らなきゃいいじゃない。)

と思われても仕方ないくらいの愚かな言動。

離陸後、しばらくして機長からアナウンスが入る。

「みなさま、本日もご利用いただき誠にありがとうございます。

 当機は現在〇〇上空を時速〇〇ノット高度〇〇〇フィートを

 順調に飛行しております。なお、当機は目的地であります福岡

 空港に向けて飛行を続けておりますが、ご案内のとおり福岡空

 港上空は台風1〇号の影響により大変風が強い状況であり、そ

 の中でのランディングとなります。従いまして、何度かアプロ

 ーチを行い着陸できない場合は、羽田空港に引き返すこととな

 りますこと、ご了承願います。」

 「・・・・・」

 「また、かなりの揺れが想定されますので、座席のベルトはし

  っかりお締め願います。」

 まさか、飛ぶとは思わないから、この緊迫したフライト。

 これもなかなか体験できるこっちゃないな。
 
 と気持ちを置き換えて空の旅を楽しんでおりました。

 が、突然機体が揺れ始め少しエアポケットに入ったようで

 ケツが浮いてしまって「ひぇー」となってしまった。

 後ろの座席からは悲鳴が聞こえる。


 かなりの揺れ。


 パニック映画さながらの悲鳴。

 何で飛ぶの?

 それが仕事だから。

 でも、誰が決めているのだろう?

機長?

 そんなことを考えているうちに次第に高度を下げてゆく。

 雲を抜ける。

 窓の外ははたたきつける雨で何も見えない。

 地上の明かりが微かに見える。

 大きく機体を揺らしながら・・・

 地上まであとわずか。

 グォーン

 何事!

 機首を上げて急上昇する機体。

 アプローチは危険と判断。

 そのまま、旋回することもなく羽田へとUターン

 合計ほぼ4時間のフライトであった。

 貴重な体験だった。

 ただ、疲れた。

 しかし、荒天の場合のフライトの最終決定は誰が下すのだろう。

 わからない。