今日もいつも通り車で通勤。特に変わったこともなく、ただ流れる景色を眺めながら運転していた。朝の道路は少し渋滞気味で、信号待ちの時間も長い。ふと前を見ると、一匹のネコが道路を横切っていくのが見えた。

黒と白の模様のネコ。慌てる様子もなく、ゆっくりと車の前を歩いていく。急いでいる時なら「早く渡ってくれ」と思うところだけれど、今日はなんとなくその歩きを眺めてしまった。

その時、不思議な感覚があった。ネコの足が地面に触れるたびに、「トトトトッ」と軽い音が聞こえたような気がした。もちろん、実際にはそんな音がするはずはない。でも、まるで足元でリズムを刻むように、耳の奥で響いた気がした。

ネコの歩き方は軽やかで、柔らかい。けれど確かに何かを踏みしめている。そんな様子を見ていると、あの「トトトトッ」という音がしっくりくる気がした。まるで音を立てずに歩くのではなく、ネコなりの小さな足音があるような気がしてくる。

ネコはそのまま反対側の歩道に上がり、振り向きもせずに去っていった。こちらが見送る間もなく、次の信号が青に変わる。車を発進させながら、なんとなく「トトトトッ」という音を思い出していた。実際に聞こえたわけではないのに、妙に耳に残っている気がする。

毎日の通勤路。何気ない風景の中にも、こうして小さな発見があるのかもしれない。次にネコを見かけたら、また耳を澄ましてみよう。