だいぶ前の放送になりますが、5/11深夜にテレビ東京系の番組「じっくり聞いタロウ」で、「北朝鮮SP」をやっていました。ふだんのこの番組は、売れなくなった芸能人達の今を放送していたり、まぁ割とどうでもいい内容の番組なんですが(笑)、この日の内容だけはかなり衝撃的で、録画を消さずに置いてて、いつかブログで書こうと思っていたものです。

ゲスト出演者が4人来ていて、北朝鮮に精通するジャーナリストの石丸次郎氏(中の写真)、12歳まで北朝鮮で暮らしていたが両親に捨てられて命を賭けて脱北し現在は韓国で「脱北美女」として活動している25歳くらいのキム・アラさん(下の写真)、北朝鮮で43年間生活した後で脱北した川崎栄子さん、マレーシアで暗殺された金正男と150通以上ものメールのやり取りをした五味洋治氏、という面々でした。

 

北朝鮮は、通常は外国人が入国しても厳しい監視下に置かれてしまって、自由な取材は出来ないのが現状ですが、石丸氏は北朝鮮で暮らす取材パートナーを探し出して、国民のナマの生活ぶりなどをビデオ撮影することに成功しています。取材パートナーも発覚したら政治犯に問われる危険を覚悟の上で、取材に協力していました。

最初は石丸氏が撮影した1998年の飢餓が一番酷かった頃の江原道(カンウォンド)という場所での映像があり、子ども達が穀物売り場で落ちている微かな米を拾ったりして命を繋いでおり、若い軍人も食糧が行き渡らずに痩せ細っていました。

その頃のアラさんは栄養を取るためにやむを得ず、ネズミや蛇や虫などを食べていたそうです。特にネズミなどは、アラさんが栄養失調で寝込んでいたので、父から「ウサギの肉だよ」と言われて食べたところ、食べ終わってから「ごめんね、実はネズミの肉だったんだ」と打ち明けられたそうです。餓死して大勢の人が亡くなってリアカーで多くの死体が運ばれたり、脱北するために中国を目指して川を渡ろうとするも凍死した人も数知れずだったようです。

1990年代までは社会主義体制で食料も配給制でしたが大飢饉となってしまい、結果として闇市場が広がって国民が自活するように変化し、市場経済が拡大していったのでした。2008年の映像では、平壌でも中心部だけが外国人向けに市民が着飾った格好をすることを国から要求されています。郊外の市場に行くと、女性を中心に商売をしている人が多く現われていて、それなりの経済活動が行われていました。

 

こうなってくると国民も生活が自立してきますので、国民や軍人がクーデターを起こす可能性は無いのか、とMCの名倉潤が尋ねたところ、ゲスト出演者は口を揃えて「それはあり得ない」と答えていました。その理由として、北朝鮮の全国民を支配する掟により、縛られているからだそうです。

石丸氏が「党の唯一領導体系確立の10大原則」という小さな赤い手帳のようなものを見せ、ここに書かれている内容が北朝鮮の最高規約で、全国民がその内容を覚えさせられ、国民にとっては憲法よりも上に位置するものだそうです。

その内容は金正恩への絶対忠誠・絶対服従を求める基本文書で、この内容を全国民に徹底させるために週1回「生活総和」と呼ばれる批判反省会が開かれて、自分が出来なかったことを反省文として書かされ、さらにその後に参加者の誰かを名指しで批判しないといけないという決まりになっていて、国民の末端から軍の幹部に至るまで、これを徹底させられるというシステムになっているとのことでした。この相互チェックにより、反乱者が発生しない仕組みになっているようです。

 

また、アラさんの話では、北朝鮮では学校教育は無償となっていますが、その代わりに石炭やウサギの皮などの物資を学校に差し出すことが要求されるため、それが出来ずに学校に通えない子どもも多いようです。北朝鮮の教育では、日本やアメリカを悪い国・未開な国と教えられ、資本主義はお金のことしか考えられない哀れな国と教えられます。その教えを徹底させるために歴史の教科書では「将軍様がアメリカ軍を退治した」とか、数学の教科書では「朝鮮人民軍の3人がアメリカ軍の帝国主義者を30人倒した。我が軍の兵士はアメリカ軍の何分の1か?」と言ったように、何かにつけて「将軍様」を正当化する内容で埋まっているのです。こうやって子どもの頃から、そういう思想が自然と植え付けられているのです。

 

川崎さんの話では、病院には手術用のナイフもなく、手術が必要な患者には闇市で入手してくることを求められます。電気もなく、ガスもないし、水も配給制で1日に1回、酷くなると5日に1回くらいになったそうです。薪や石炭は売っているそうですが、アラさんはお風呂に入れるのは年に1回程度で、そんな生活を送っていると逆に皮膚の再生がされなくなって垢が出なくなり、かえって肌はキレイになるそうです。

 

また石丸氏の話になりますが、北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す理由として、自分達の独裁体制を維持するため、人口2,000万程度の小国が大国に飲み込まれないために、核とミサイルでその存在をアピールしているとのことでした。

 

最後に金正男氏とメールのやり取りをしていた五味氏の話ですが、金正男氏は少なくとも6回ほどは暗殺未遂に遭っていたそうで、毒殺や部屋の爆破などの経験があったそうです。マレーシアでは護衛が付いていなかったようですが、金正男氏は周りを警戒してボディーガードを付けるかと思えば、ある時には気を許して1人で動き回ることもあるなど、ちょっと脇の甘いところがあった人物のようです。

 

日本にとっては隣国である北朝鮮ではありますが、僕自身この番組を見て新たにわかったことが多く、まだまだ闇に包まれている部分が多い国ですね。衝撃的な内容でしたので、ここで紹介させていただきました。