中国 月面探査 本当の狙い
探査機の嫦娥(じょうが)3号は予定の場所「虹の入り江」に着陸した。
嫦娥とは、中国の伝説で月に住む仙女のこと。
月のように重力が比較的大きく、大気がない天体で、ねらった場所に着陸するには、
地表の形状や距離を正確に測りながら、逆噴射して徐々に速度を落とす精度の高い技術が求められる。
その開発を支えてきたのは、計画的で一貫した月探査戦略だ。
2007年に初の月探査衛星「嫦娥1号」を打ち上げ、10年には「嫦娥2号」が
月を周回飛行しながら虹の入り江の撮影に成功。
月探査に力を注ぐのは、地球にはわずかしか存在しないが、月面には大量にある
ヘリウム3の権益確保につなげるもくろみがあるとされる。
ヘリウム3は次世代のエネルギー源である核融合発電の燃料で、実現すれば、
わずかな量で莫大(ばくだい)なエネルギーを取り出すことができる。
核融合発電を、人間の手で行う研究は、日本をはじめ、世界中で進められており
核融合は、原子力(核分裂)に比べて発生できるエネルギーが大きく、
また放射能が少ないという特徴がある。
宇宙関連技術は軍事と結びつきやすいだけに、中国の台頭は米国には脅威だ。
近年は、米国の技術が中国に流出することや、軍事転用されることへの警戒感が強まっている。
日本は07年、中国に先立って月を周回する探査機「かぐや」を打ち上げ、
月表面の詳細なマップを作製した。
月着陸では中国に先行するはずだったが、米オバマ政権が10年に有人月探査計画の
中止を発表した影響などで、月探査への意欲は薄らいでいる。
ヘリウム3 核融合発電
「月の権益を分かち合う通行証を手に入れる」
時事通信などが報じたところでは、中国共産党の機関紙「北京青年報」は、こう宣言した。
通行証の意味は書かれていないが、事実上、宇宙空間の領有権に近いものを指すらしい。
月のエネルギーと鉱産物が重要な資源の補充になるとしたうえで、
「いかに中国の宇宙空間の利益を守るかが避けて通れない課題となった」と書いているからだ。
核融合発電の燃料になる「ヘリウム3」は、次世代エネルギーとして期待されている。
ヘリウム3は、地球上ではわずかしか存在しないが、月には、全人類が消費する電力の数千年分が
賄える量 数百万トンが存在すると言われている
ちなみに、スペースシャトル1機に積載可能な分量25トンのヘリウム3を持ち帰って
核融合発電を行なえば、米国全土に1年間必要な電力約3兆キロワットを発電できる
月のヘリウム3採掘に関する議論は宇宙関連の団体や国際会議の場で幅広く行なわれており、
NASAのほか、中国とロシアが、関心を持っていることをすでに明らかにしている
まだ理論の域を出ないものの、核融合を利用してエネルギーを取り出す方法は、
他の核技術に比べて安全で持続可能だとされている。
核融合施設から出る放射性廃棄物の量が、ヘリウム3を使った発電の場合はとくに、
これまでよりはるかに少ないためだ。
ただし、実現しようとすると 多くの壁が立ちふさがる
まず 核融合反応を起こすには1億度以上の超高温が必要。
その超高温に耐えられる物質が存在しないので、磁場でプラズマを
閉じ込めておかなければならない。
現在はトカマク型という磁場閉じ込め方式が主流となっている。
それによる高圧プラズマの保持世界記録は日本の実験装置JT-60が持っているが、
30秒弱に過ぎない。
また、高エネルギーの中性子の放射に耐える素材、放射線を帯びた炉壁を
交換したりする遠隔操作ロボット、トリチウムなどの核融合用燃料を安全に取り扱う技術、
放射線漏れ対策や放射線を浴びた部品の安全な処分法、などが必要となってくる。
さらに膨大な建設コストも何とかしなければいけない。
専門家によると、商用規模の核融合炉の実現には少なくともあと50年かかると言われている
【データ】
ヘリウム3(「ヘリウム・さん」あるいは「ヘリウム・スリー」と呼ぶ)は、
ヘリウムという元素の中で、ちょっとだけ中身が違うもの(同位体元素)。
ヘリウムは、元素の中では水素に次いで軽いもので、原子番号は2番でこれまた水素の次
風船の中に入っていたり、吸うと声が変わるガスとして、なじみがある。
ヘリウムは地球にはあまりないですが、太陽の中には 多く存在する
そもそも、ヘリウムというのはギリシャ神話の太陽神「ヘリオス」にちなんで名付けられた。
このヘリウムは、太陽の中で水素が核融合反応を起こしてできたもの。
核融合反応とは?
太陽は地球の33万倍もの体積を持っている、巨大なガスの球。
これだけ大きなものになると、中心の圧力はたいへん大きなものになる。
また、それだけの物質が上にあるため、中心部ではものすごい重力エネルギーも生まれる。
太陽の中心は1500万度という温度になるといわれているので、高温・高圧の中で、
水素の原子がくっついてヘリウムになるという反応が起きる。
このときに膨大なエネルギーが生まれて、それによって太陽が輝いている。
この太陽の中の核融合反応で、ヘリウム3ができる。
このヘリウム3は、太陽風(太陽から流れてくる粒子の流れ)に乗って、月へ届く。
月には大気がないので、ヘリウム3は月の表面の砂(レゴリス)に吸着される。
月ができてから45億年の間に、太陽からのヘリウム3は月の表面の砂に
ずっと吸着され続けてきたと考えられてる。
ヘリウム3それ自体も、核融合反応の材料になる。
ヘリウム3と、水素の一種である重水素がくっつく(核融合する)と、ヘリウム4(普通のヘリウム)と陽子になる。
このときに飛び出す陽子が膨大なエネルギーを発生させる。