ドイツ自然エネルギーのみで電力供給している会社



「ナチュアシュトローム」「リヒトブリック」
「シェーナウ電力会社」「グリーンピースエネルギー」


ドイツにナチュアシュトローム(Naturstrom=自然電気)という電力会社がある。


1998年に環境団体の関係者が集まって作った電力会社で、自然エネルギーすなわち
再生可能エネルギーのみを供給している。


ドイツは脱原発を決め、自然エネルギーを増やすべく「エネルギー改革」に取り組んでいるが、
25万人の顧客を誇る同社はそれに最も寄与している会社として、

第3機関による商品比較「商品テスト財団」の自然エネルギー部門で最優秀に選ばれた。


 欧州連合(EU)の指針により、ドイツでは1998年より電力自由化を実施。
地域ごとの独占市場はなくなり、どこからでも電力を購入できるようになった。


それにより、原子力や石炭の安い電力を看板に新規会社が50社ほど市場に参入したほか、
統廃合を経て、現在は約1000社が乱立する。


そのうちドイツのRWEとイーオン、スウェーデンのヴァッテンファル、
フランス系のEvBWの4社でドイツ市場の8割を占める。


 ナチュアシュトロームは自由化を前に「既存の電力とは違う、
質のいい電力を提供しよう」と1998年、BUNDやNABU、ユーロソーラー、
連邦風力エネルギー協会など自然保護団体や、自然エネルギーの
関連団体など16の団体や個人が集まって設立した。


株式会社で現在900人ほどの株主がいるが、株主の選定は社が行う。
買収されたり、独立性を失わない配慮である。


 1999年6月にはドイツソーラー賞を受賞し、2001年6月には顧客は1万人を数えた。


各地の電力公社と協力契約を結び、販売する再生可能エネルギーの質を保証したり、
2008年より2010年までバングラディシュの95の家庭にソーラーパネルを設置する
プロジェクトを実施するなど、さまざまな活動を展開。


2010年4月には第3機関による商品比較「エコテスト」の自然エネルギー部門で

一番に選ばれた。


社屋にもソーラー発電装置を設置し、デュッセルドルフの本社のほかベルリンや
ケルンなど全国8箇所で、計80人が従事している。


 2011年1月に15万人だった顧客は、現在25万人。
福島原発の事故後、申し込みが殺到し、1年足らずで10万人増えた。


「電話が鳴りっぱなしで、大忙しだった」とベルリン事務所の

広報デニス・デュアコープ氏は語る。


ドイツで自然エネルギーのみを供給している会社は、同社のほかに「リヒトブリック」
「シェーナウ電力会社」「グリーンピースエネルギー」があり、
福島以降この4社は爆発的に顧客を増やした。


また他の電力会社でも、原子力や火力発電のほか、自然エネルギーのみを供給する
「エコ電気」をオプションとして用意しているところもある。


同じ会社内で、通常の電力から少し高めの「エコ電気」に乗り換えた人も多い。


 自然エネルギーを購入する家庭は、通常の家庭より月平均3ユーロ(330円)ほど
電気代が高くなるといわれている。


しかし自然エネルギーの購入は、個人ができる脱原発。
全国民が自然エネルギーしか買わなくなれば、電力会社は原子力や火力を止めざるをえない。


ドイツには約4000万世帯あるが(人口約8200万人)、
自然エネルギーを購入しているのは100万世帯ほど。


「福島以後、自然エネルギーを求める人が増えたが、それでもまだ少ない。
今は乗り換えの波は去り、福島は忘れられつつある」と、デュアコープ氏は話す。


ちなみに同社で、基本料金7,95ユーロ(800円)、1キロワット時ごとに
23,40セント(24円)となっている。


 ドイツではガス市場も自由化されており、ナチュアシュトロームでも2009年より扱っている。
ガスには、バイオガスの含有率が10%、20%、100%のものがあり、選ぶことができる。


 同社ではドイツ国内から約6割、残りをオーストリアから調達している。
72%が水力で、28%が風力になる。


オーストリアの水力発電からのほか、国内の小さな発電装置の電力を購入。


風力や太陽光発電の新規設置にも力を入れており、販売した1キロワット時あたり
1セント(1円)を補助金に回している。


すでに全国で180以上の設備を支援した。分散型の小型施設による
電力の地産地消を目指している。


 ヘッセン州のハッタースハイム市は2012年1月、再生可能エネルギーエージェントによる
「今月のエネルギー自治体」に選ばれた。


ナチュアシュトロームは4年前から同市に電力供給しており、
幼稚園にソーラーパネルを設置するなど協力。


市は年間400トンのCO2削減しており、公共施設に設置したソーラーパネルで
年間総計120メガワット時を生産している。


以前市が購入していた既存の電力は、ナチュアシュトロームより高かったという。


 ウラン、石油、天然ガスを輸入に頼るドイツでは、風力や水力、太陽光、
地熱などの再生可能エネルギーが推進され、1991年には電力供給法により
再生可能エネルギーの買い取りが義務化された。


さらに2000年の再生可能エネルギー法により、自然エネルギーの買い取り価格が
高額に固定されたため、自然エネルギー発電施設が投資の対象となり、
父兄が太陽発電装置を学校に設置したり、市民団体が一般市民に風力発電の
出資を募るなど、大きな成果をみせている。


 福島原発の事故後は、自然エネルギーに乗り換える人が急増。


ドイツラジオ放送局によると、これまで10万人程度だった自然エネルギー電力会社の
顧客は12万人に増えた。


グリーンピースエネルギー社のホームページには1日1万8000人が訪れ、そのうち1割が
同社からの電気購入契約を結んだという。


 ドイツにおいて再生可能エネルギーが占める割合は全電力の17%。


連邦政府環境省は自然エネルギーの促進と天然ガス発電所の建設により、
電力供給の低下やCo2の増加を招くことなく、2017年までに脱原発が可能だと発表している。


 北ドイツのハノーファー市の職員は、チェルノブイリの被災者から「ドイツが原発を
やめたら、まだ地球にも希望があると信じることができる」といわれたという。


ドイツ国民はデモや選挙を通じて、原発は不要だと主張している。
ドイツの脱原発が欧州全体、ひいては人類全体の希望となることを多くの人が願っている。