自分たちで電力を~立ち上がるドイツ市民の挑戦 2012



 ドイツでは最近、自治体や市民が電力会社を設立して自分たちで
電力供給をしようという動きがみられる。


大手電力会社による集中型発電から脱却し、再生可能エネルギーでの
地域分散型発電を実現しようと市民が立ち上がっている。


 ドイツでは1998年の電力市場自由化以前は第三セクター形式の
電力公社が一般的だった。


しかし自由化を機に、発電、小売、配電に誰でも参入できるようになり、
消費者はどの電力会社から電力を購入するか自分で選べるようになった。


そのため電力会社の新規参入や統廃合が起こり、

現在は国内に1000社ほどある。


 自由化前後から電力公社も他の自治体の公社と合併したり、大手電力会社に
吸収されたりするなど、合理化が進んだ。


しかし最近になって再び、市町村が電力供給権を買い戻し、自ら電力供給に
携わろうとする傾向がある。


エネルギー消費者団体によると、2007年より2011年3月までに100以上の市町村が、
電力供給権を取り戻した。うち40以上の地域で新たに電力公社が生まれたという。


 ドイツでは各市町村の市議会がそれぞれ電力供給会社を決めることになっている。
契約は一律20年。


契約が切れる2年前に連邦機関で情報が公開されるので、
興味のある電力会社や団体は誰でも応募する。


供給権を獲得すると、その地域の送電線を買い取らなければならない。


 電力自由化以前は、供給権を獲得すると公共施設はもちろん市内の
全世帯に独占供給できたが、現在では公共施設への供給のみとなった。


個人や事業所は電力供給会社を自分で選べる。


しかし他社が供給する場合、送電線使用料が課されるため、
供給権を持っている会社にとって収入となる。


 ちなみに送電線使用料は自由化当初、各会社の交渉にまかされていたので、
送電線を保持する既存の会社は高額の料金を設定し、新規参入者には

不利となることが多かった。


そのため2005年より連邦系統規制庁(Bundesnetzagentur)が

公正な料金となるよう監視している。


 自治体が電力会社の選択権を持つようになった背景には、電力会社のサービスへの不満や、
自治体の要望が聞き入れられないことに対する不信感がある。


自治体が決定権を握ることで、自分たちの望む電力供給を実現できる。


例えば放置されていた地元の小さな水力発電施設を再稼動したり、
太陽光発電に追加補助をするなどして、電力や環境に対するコンセプトを
具現化できるのである。


 南ドイツの黒い森に位置する人口1万2000人のティティゼー・ノイシュタット市も
独自のエネルギー政策を推し進めようとする自治体のひとつだ。


自分たちの手に電力を取り戻そうと 市民有志が企業

「エネルギー供給ティティゼー・ノイシュタット(EVTN)」を設立。


自然エネルギーのシェーナウ電力会社の協力を得て2012年5月から

電力供給を開始している


 EVTNは組合制による出資によって運営され、一口500ユーロ、

最大一人10口まで出資が可能。


大出資者を作らないため、あえて一人10口までとした。

6割がEVTN、3割がシェーナウ電力会社の保有で、残り10%は市民参加となる。


現在は5人の電気技師がおり、4月から事務員も雇う。


リサイクルセンターだった場所を市が6万ユーロ(600万円)かけて改装し、
EVTNに事務所として賃貸する。


 これまで同市にはエネルギーサービス社(ED)が電力供給してきたが、
20年の供給契約が2011年末で切れることを受け、新たにEVTNが名乗りを上げた。


市議会は両社を比較し、環境に配慮したコンセプトなどからEVTNに決定した。


 首都ベルリンでは2014年末にベルリンと、原発を所有する

大手電力会社ヴァッテンファルとの契約が切れる。


2011年夏、26の環境団体や社会団体の関係者が賛同して

「ベルリン新エネルギー」という団体を結成した。


100%再生可能エネルギーによる、民主主義的でエコロジカルな会社組織の

設立を目指している。


人口約350万のベルリンでは、17万2000人の署名を集めると市民投票によって

電力会社を決めることが出来る。


 しかし道のりは簡単ではない。


投票により市民がヴァッテンファルを退け、新しい電力会社を選択しても、
新会社はヴァッテンファルが持つインフラを買い取らなければならない。


同団体によると送電線は4億ユーロという試算だが、
ヴァッテンファルは20~30億ユーロを主張している。


 もし負ければヴァッテンファルにとっては大きな損失となるため、必死で抵抗している。
このように送電線の買い取り価格を巡って、しばしば争いとなることが多い。


しかし、ベルリンで市民による供給が実現すれば、他都市への影響は大きいだろう。


 市民供給の先がけである南ドイツのシェーナウ電力会社の設立者のひとり
ウルズラ・スラーデクは「電力は私たちの生活にかかわる重要なことがらであり、
企業が最大利益追求の手段とするのはおかしい。


市民ならではの視点が重要だ」と話し、ノウハウの提供や技術サポートなど

電力業界への市民参加を支援。


国策である2022年の脱原発には、市民参加による分散型発電が

欠かせないと考えている。