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糖質オフを続けると?糖質オフ失敗の理由、糖負荷試験、反応性低血糖、インスリンのヤバさ-2019-0529
毎晩の肉食志向に自己流の糖質制限ダイエット。現代人が好みがちな食習慣が腸内環境に打撃を与えているという。余分な脂肪を脱ぎ捨て、腸内環境をきちんと上げるにはどうすれば?
「腸がこんなにも大切だったんですね……」
会社経営者の男性(53)ずっと苦しんできた不調の「原因」が、あまりに意外なものだったからだ。
男性は単身者で、仕事が生活のすべて。朝から深夜まで、休日も休みなく働いていた。食事は3食コンビニで済ませ、暴飲暴食もしがちだった。気づけば身長167センチで体重75キロという典型的なメタボ体形。喫煙習慣があり、極度の運動不足で、血圧は160台、悪玉コレステロール(LDL)値も220mg/dlと高かった。
最初にかかった医師からは、運動と食事療法を指導された。だが、多忙のため実行できず、指導とはほぼ真逆の生活を送るばかり。やがて、深刻な不調が表れた。
いつも体がだるくて疲れやすい。頭はぼうっとしがちで、慢性的な便秘もあった。男性は江田クリニック院長・日本消化器病学会専門医の江田証医師のもとに駆け込んだ。
「いわゆる慢性疲労症候群で、ブレイン・フォグもあるようでした」
診察した江田医師は。ブレイン・フォグとは、脳に霧がかかったようにぼんやりした状態が続くことを言う。
江田医師は、「ある狙い」で食事指導を始めた。食物繊維が豊富な玄米、キャベツやブロッコリースプラウトなどの野菜を食べること。スクワットなどの筋トレも取り入れた。
結果、男性は2カ月ほどで症状が劇的に改善。体重も10キロほど落ち、メタボ体形から抜けだした。人生は一変した。
男性を激変させた江田医師のある狙いとは、「腸内環境の改善」だった。腸内環境の重要性をこう指摘する。
「腸内環境を整えることが、ダイエットはもちろん、慢性疲労症候群などあらゆる心身の不調を改善するカギになります」
腸内環境を左右するのが、腸内に約100兆個存在すると言われる「腸内細菌」だ。腸の粘膜にびっしりと敷き詰められるように生息し、その様子が花畑のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」とも呼ばれる。腸内細菌は、宿主である人間がとる食べものから食物繊維や糖などをエサにして増殖する。さまざまな代謝物を生成し、体の機能に多大な影響を与えることがわかっている。
腸内細菌は、大きく三つに分けられる。(1)代謝物が消化・吸収機能に役立ち、体によい影響を与える「善玉菌」、(2)代謝によって有害な毒素を作り、下痢や便秘など体に悪影響を及ぼす「悪玉菌」、(3)善玉、悪玉の数的に優位な方に加勢する「日和見菌」だ。主な善玉菌にビフィズス菌やラクトバチルス、悪玉菌はクロストリジウムや大腸菌、日和見菌にバクテロイデス、ファーミキューテスなどがある。
3者の理想的な比率は「2:1:7」とされる。だが、悪玉菌が増えてバランスが崩れ、日和見菌が悪玉菌に加勢すれば、腸内環境が悪化し、さまざまな不調が表れることになる。
現代社会には、「冒頭の男性のように腸内環境のバランスを崩している人は極めて多いのでは」と江田医師をはじめ、多くの専門家が警鐘を鳴らしている。
なかでも陥りがちな落とし穴のひとつが、ストレスなくやせられると本誌でも取りあげたことがある「糖質制限ダイエット」だ。糖質制限では、炭水化物の摂取を制限する代わりに、たんぱく質や脂質が豊富な食べものをとる。だが、「糖質を一切とらない」など極端な制限をかけてしまうと、腸に悪影響を与えることになる。
大妻女子大学の青江誠一郎教授(栄養学)は
「腸内の善玉菌や日和見菌にとって最大のエサが食物繊維です。炭水化物は食物繊維と糖質からできていて、可食部100グラムあたりの食物繊維含有量は、大麦は9.6グラムと多く、ゴボウ5.7グラム、玄米も3グラムある。穀物を食事から抜いてしまうと、善玉菌や日和見菌のエサが減り、結果、腸内環境の悪化につながるのです」
順天堂大学医学部教授で、同大に日本で初めての便秘外来を開設した小林弘幸医師も、こう指摘する。
「炭水化物を抜く食事は、腸によくありません。なぜ、現代人が生活習慣病や肥満に悩むのか。答えはただ一つ、『食物繊維の不足』です。第2次世界大戦直後の日本人の食物繊維摂取量は1日約30グラムですが、現在はたった十数グラム。これがさまざまな生活習慣病を生んでいることは間違いありません」
江田医師は、糖質制限そのものに加え、「食事の偏り」も腸内環境の乱れにつながると言う。腸内細菌の多様性が保たれていることも、腸内環境にとって重要だからだ。
「単一の菌ばかりが増え、多様性が失われる状態を『ディスバイオシス』と言います。腸内細菌のバランスが崩れ、体に悪影響を及ぼすことになる。さまざまな食物をとり、腸内細菌が多様に増えるのが、理想的な腸内環境です」
ごはん抜きやリンゴだけなど、単一の食べものを増やしたり減らしたりすれば、腸内環境は乱れやすくなる。
特に、糖質制限をしていると、便秘になるケースも多いうえ、控えた炭水化物の代わりに、どうしても「ある物」ばかり食べるようになる。
「肉です。たんぱく質は消化の過程で分解され、アミノ酸になります。肉を食べすぎればアミノ酸は小腸で吸収しきれず、大腸まで到達します。アミノ酸をエサにするのは主に悪玉菌で、アミノ酸を分解する過程で硫化水素を作り、卵の腐ったような強烈なにおいを発します。実は、プロテインや肉類を多く摂取するボディービルダーのおならは非常に臭い。臭いおならが続くなら、不調のサインと捉えてください」
悪玉菌はアミノ酸を好んで食べ、腐敗物質をつくる。臭いおならは、腸内環境が悪玉菌優位の状態になっている証しだ。
年齢を重ねることでも腸内環境は変化する。注意すべきは50代以上だ。
「人間は赤ちゃんの時は、善玉菌の割合が非常に多い。60歳を過ぎると善玉菌が徐々に減り、悪玉菌が増え始めます」
若い時は、食べたものはほぼすべて小腸で吸収され、大腸にまわるのはほとんど「搾りかす」だった。だが、加齢によって小腸の吸収能力が落ち、本来は小腸で吸収されるべきアミノ酸などの栄養が大腸まで届くようになる。結果、大腸で悪玉菌が増殖してしまうのだ。江田医師によると、腸内環境の悪化は、実は肝臓がんや大腸がんになるリスクまではらんでいるという。
「本来届かなくてもいい過剰な栄養分が大腸まで届き、富栄養化します。すると、ある菌が増殖し、大腸がんのリスクになる『二次胆汁酸』という物質をつくります。二次胆汁酸は、血液の流れに乗って、腸内の血管から門脈までいき、肝臓にたどり着く。すると肝臓がんのリスクになることがわかっています」 この菌は、発見したがん研有明病院にちなんで、「アリアケ菌」と呼ばれている。
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数々の研究結果より科学的に実証されて、従来の常識とは真逆になっていることも明らかになってきています。自分に合った健康習慣を取り入れて下さい。