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全身の筋肉が衰える国指定の難病「筋ジストロフィー」の治療薬として、感染症に効く既存の抗生物質が有効な可能性があることを山口大などの研究グループが発表した。治験の結果をまとめた論文が昨年12月、英国の医学系学術誌に掲載された。(小林隼)

 研究グループは、筋ジストロフィーの一種で、成人の患者数が最も多い「筋強直性ジストロフィー」を対象に治験を行った。抗生物質の「エリスロマイシン」を半年間にわたり患者30人に投与したところ、重篤な副作用を起こさずに症状を改善することがデータ的に示された。

 新薬の開発には一般的に十年単位の時間と数百億円の費用がかかる。研究グループは患者への早期の提供とコスト抑制を重視し、安全性が確認されている既存薬を転用する「ドラッグリポジショニング」と呼ばれる手法を選択した。

 筋強直性ジストロフィーは、筋肉の再生に関連する遺伝情報「メッセンジャーRNA(mRNA)」が変異し、たんぱく質が正常に生成されないことが原因とされる。現在は根本的な治療法が確立されておらず、研究グループは今後、最終段階の治験を実施して詳細な効果を調べる方針。

 今回の研究を主導した山口大大学院医学系研究科の中森雅之教授(臨床神経学)は、記者会見で「世界初の治療薬として患者の期待も大きい。国の薬事承認を含め、最短で2~3年で患者に届けたい」と意気込みを語った。