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ケン・マツモトの「この素晴らしき世界」

ケン・マツモトが、プロレス、ロックその他の趣味について綴るプログです。

有明の東京ガーデンシアターで、ボブ・ディランの"Rough And Rowdy Ways" World Wide Tour 2021-2024東京公演最終日を観た。ボブ・ディランのライブは通算9回目。

東京ガーデンシアターは初めて。以前近くに来たことがあり目的地の場所はわかっていたが、なぜか渋谷駅で埼京線やりんかい線に乗るのが苦手でいつも逆方向に乗りそうになる。

 

今回もそうだったが、それをも見越して早めに家を出ていたので、17時開演のところ、16時少し過ぎには現地に到着。入場前にグッズの購入。特に惹かれるものはなかったので、日本限定、背中にツアー日程が入ったTシャツを購入したが、正直なところそれほどいいデザインでもなく、単に記念のために買った感じ。

入場してみると、とてもいい雰囲気の会場だと感じた。もっとも、アリーナ席の椅子が小さく、元々私自身体が大きい上に、右側がデカめ、左側がかなりデカめの人に挟まれていたため、かなり窮屈に感じた。

コンサートはほぼ定刻に開始。演奏された曲目は、既に各所で報告されているとおり、現時点での最新作『ラフ&ロウディ・ウェイズ』の収録曲を中心とした構成。ストーンズやポール・マッカートニーなど大御所のコンサートでは、最新アルバムの収録曲をほぼ全曲演奏するなど考えられないが、さすがはディラン。

 

最近は、例えばブルース・スプリングスティーンが『ザ・リバー』再現ライブをやったり、U2が『ヨシュア・トゥリー』再現ライブをやったり、我らが佐野元春が『Sweet 16』の再現ライブをやったりなど、過去の名作アルバムの再現ライブをやるのが流行っているが、ディランの今回のコンサートはそのような風潮に対する批評のようにも感じた。ディランのような大御所が過去の名作などではなく自身の最新アルバムでそれをやってのけるのはすごいことだと思う。

 

『ラフ&ロウディ・ウェイズ』という作品がまた、曲のムードに統一感があり、そのようなコンセプトでのライブに相応しいアルバムであることも再認識させられた。このアルバムの収録曲の独特のムードとディラン・バンドの演奏によって、ミステリアスな異世界に迷い込んだかのような気分にさせられた。

そして、それ以外の曲目の選択もまたシブかった。『ジョン・ウェズリー・ハーディング』収録の"I'll Be Your Baby Tonight"、『ナッシュヴィル・スカイライン』収録の"To Be Alone With You"、『グレーテスト・ヒット第2集』収録の「川の流れを見つめて」と「マスターピース」、『スロー・トレイン・カミング』収録の「ガッタ・サーブ・サムバディ」、『ショット・オブ・ラブ』収録の「エブリィ・グレイン・オブ・サンド」など。『グレーテスト・ヒット第2集』は別として、他は必ずしも満場一致の傑作ではなく、むしろディランファンの間でも賛否両論があった作品と言ってよいだろう。

 

これらの曲を選んだのはむろん『ラフ&ロウディ・ウェイズ』の楽曲の持つムードと統一感があるという判断もあったのだろうが、ディラン自身はこれらの作品を気に入っており、もっと評価されるべきと考えているからではないかという気がしている。今日はもっぱらピアノを弾いていたディランがラストの「エブリィ・グレイン・オブ・サンド」の後半で突如アルバムバージョンを彷彿とさせるハーモニカソロを吹き始めたのを聴いたとき、そのことを確信した。