職場の工場に64歳のじぃじがいる。
他の60代に比べてもどことなく、じぃじ感のある風貌。
しかし、5つの工場の中でも、一番重たい製品を扱っていて忙しいここの工場で、22時までの残業もこなす。
まさに、スーパーレジェンド。
ベテランならではの知識や、機械の故障等をなんでも自分で直しちゃったり、仕事の手際も良いので、
工場の中でもかなりの戦力。
みんなも本当はもう少し楽をさせてあげたいと思ってるけど、実際、仕事が大変な工場なので、若手や中堅でも、適応仕切れてない人も多く。
じぃじに甘えてしまうことも多い…
そんな、じぃじのお話。
エピソード1
《じぃじと秘密の箱》
そんなじぃじは愛用の工具箱がある。
工具なんて、あちらこちらに溢れてるけど、じぃじはその工具箱の道具を使う。
木の箱にカラフルな模様が付いていて綺麗。
サイズは大きめで、両手で抱えるように持たないといけない、ちなみに、取っ手がない工具箱。
いつも、じぃじは大事そうに抱えて歩く。
見てるとちょっと可愛い(笑)
綺麗な模様の工具箱は、その見た目から工具箱とは思えない。
工具箱を抱えて歩くじぃじに、思わず、
「玉手箱みたいだね。」と俺は言った。
じぃじはきょとんと(・_・)した顔をしたが、
直ぐに嬉しそうな顔をして、綺麗な木の工具箱を抱えたまま、僕の目の前でそれを開けた。
もちろん、煙などは出ないが
たくさんの工具が自分の場所を乱さないように、綺麗に揃って、入っていた。
その工具箱の中を見つめる俺。
そんな俺に、工具箱を開けた、じぃじは言った。
「おじいちゃんになっちゃった!」
!Σ( ̄□ ̄;)
元からおじいちゃん、やんけ!(笑)
!Σ( ̄□ ̄;)
エピソード2
《じぃじの粋な計らい》
じぃじは時折、冗談を飛ばす。余りにも突然で、たまにスルーしそうになることもしばしば。
それと、突然思い出したように話し掛けて来る。無口ではないけど、それほどお喋りでもない。
「おい。」
じぃじが仕事中、突然声を掛けて来た。
「うん?どうしたの?」←じぃじと仲良しだから、割合砕けた感じで話してる。
「お前、子供何人いるんだ?」
!Σ( ̄□ ̄;)いや、いないし。むしろ、独身だし。
「結婚してないですよ!誰かと間違えてないっすか!?」
「お!そうけ?」
何年一緒に働いてるんだよ(*゜д゜*)ちょっとビビったわ。
「お前、彼女は?」
「いないっす。」
「そうなのか?紹介してやろうか?」
!Σ( ̄□ ̄;)
じぃじ、紹介してくれるの!?意外なんだけど。
「マジっすか(;`・ω・)ノ?じゃあ、お願いします。」
「おう、何人か同級生(60歳代)の未亡人がいるから、任せておけ。」
!Σ( ̄□ ̄;)!?60代とかどんだけ歳の差あんだよ。
エピソード3
《ここは笑っていいの?》
じぃじがじぃじに見える要因のひとつに、誰も触れないけど、髪の毛が薄いのがあるかもしれない。
おでこがだいぶ、後退してる。
まぁ、スーパーレジェンドに対して、そこを触れる人間もいない。
むしろ、会社内で、スーパーレジェンドに、いたずらしたり、かんちょうしたりする奴は、多分俺しかいない。
再雇用(60歳定年後)で、22時まで残業やって、知識も豊富で、元気だから。ある種、別格扱い。
40代~50代はじぃじの教え子みたいな感じで、
20代~30代は、親父と近い年、またはそれ以上、だから少し緊張するようだ。
そんなスーパーレジェンドも、さすがに年齢が年齢。
仕事中に居眠りすることが多々ある。
機械とラインに囲まれた中で、よく寝れるなって感心するけど、危ないから起こす。俺の役目のひとつになっている。
ある日、いつものように椅子を見つけては座って寝るじぃじの横を、荷物を乗っけたフォークリフトが通過。
運転手も通路の脇で、まさか仕事中に寝てる人がいると思わなかったのか、ハンドル操作を誤り、じぃじの前で運んでた物を落としてばら蒔いた。
じぃじに怪我はないけど、俺も慌てて駆け寄って、
「怪我ない?大丈夫?」と言うと。
その音で目覚めた、じぃじが…
頭に手を置いて、
「本当だ。毛がない。大変だ。」
と言った。
!Σ( ̄□ ̄;)大変じゃねーよ、元からないし。
その場に居合わせたみんなが、笑っていいのか、いけないのか分からず、ただ黙って立ち尽くしていた。