私の母から聞いた話が興味深かったので書いてみる。
今まで全く料理をしなかった年配の男性が料理をすることになる状況がある。例えば、奥さんがボケてしまった、死別した、離婚した などなど。料理をする気にならずに宅食や外食にいくケースも多いのだろうが、料理に目覚める人もそれなりにいるらしい。先日、母はこのような状況の男性に料理を教えてあげたと言って、男性の発言（「適量って言われてもどれだけか分からん」等々）を面白がって話していた。
こういう人にとってはネットや本で得られるレシピは実に不親切だ。初心者用と書いてあっても、本当の初心者向けにはなっていないのだ。レシピを作るような人は料理が好きな人ばっかりなので、初心者がどこで詰まるのかが分からないのだろう。私も全く料理をしない人間だった（今でもたいしたことはないが）ので、実体験を通して具体的に書いてみる※1。
・料理ができる人にとっては当然すぎる事項が省略されている。
例えば野菜の皮をむく、洗う、キャベツ等で一番外側を捨てる など。初心者向けというなら、当たり前を省略してはいけないと思う。世の中には米をとぐことを知らない人もいれば、卵を割ったことがない人もいるのだ。「切る」も「どう切るの？」と聞きたくなることが多い。
・道具の使い方の説明がない。
例えば、灰汁を取ると書いてあってもどうやって取るのかは書いていない※2、鍋とだけ書いてあって深いものと浅いもののどちらがいいのかは書いていない等。初心者でも、家族がちゃんと料理をしている場合、台所に道具が大量にあって困るケースは多いと思う。上で書いた男性から母の所には「これは何に使うのか教えて」と言って調理道具を撮影した写真※3が送られてきていた。どこにも説明がないことの証拠だと思う。
・適量、ひとつまみ、適当に などなど、曖昧な記載が多すぎる。
適量は「好みで適当に入れろ」ということなのだろうが、感覚がわかっていない初心者には無理だ※4。初心者向けでなくても、レシピ作成者の思う適量を書くべきで、適量で逃げるのはレシピを作るという仕事の放棄だと思う。
説明が足りないことに関しては、Web上のレシピなら対処できると思う。わからない部分をクリックするとさらに細かい説明が出てくるようにしておけばいい。こうしておけば初心者以外に「不要な情報が多すぎる」と文句を言われることもないだろう。
このブログを書くにあたって参考にした本
https://www.amazon.co.jp/dp/4798043664/
この本は一人暮らしで道具や調味料がそろっていない場合を前提として書いてあり、私や上の男性のように「家族に料理をちゃんとやる人がいる（いた）場合」とは状況がかなり異なるが、参考にはなる。
初めの話に戻ると、「超初心者に優しく料理を教える」という需要はかなりあると思う。そのような教室もあるが、初心者の場合は家で何がどこにあるのかを把握したり、教室だと事前に準備されている部分（材料や道具が準備されていたりする）で詰まったりする※5。家に指導者が訪問して、何もない状態からスタートする必要があるのではないか。例えば、レシピを見てスーパーで買い物をする という部分も初心者にとっては結構難しいものだ（肉はどれを買えばいいのか分からなかったりする）。
余談 私が世の中のレシピに対して感じている不満。
・分量の記載が先頭にしかない
テレビの料理番組や上の写真のように、先に全部の材料を量って用意してから料理を始めるのならこの構成でもいいのだが、実際にはその場で量って投入していくことが多いと思う。その場で量ろうとすると先頭にいちいち戻らないといけない。特にWebのレシピではスクロールをする手間が発生してイライラする※6。重複してもいいから調理過程の所にも量を書いて欲しい。
※1 私の場合、詰まった場合には妻に聞けば解決するので初心者用でなくても困ることは少ない。聞ける人がそばにいないと難易度は一気に上がる。
※2 もっと言えば、灰汁とは何なのかの説明がない。言葉として知っていても、どのような部分を取ればいいのかは未だによく分からない。
※3 芋を潰すマッシャーとフライ返しが写っていた。
※4 一方で、これについては「そんなにきっちり量らなくても最終的な味にはあまり影響しない（ことが多い）」ともっとしつこく書いておくべきだと思う。私が理系人間だからなのかもしれないが、必要以上にきっちり量っている間に食材を焦がしたりする失敗は多いと思う。慣れている人は大さじや小さじでいちいち量らずに適当に入れていたりするものだ。
※5 現実の台所での最大の難関は「（今ある材料で）何を作るか決める」ところだったりする。
※6 手が汚くなっていると画面をスクロールするだけでも結構な手間がかかる。