昨日の続き。訂正は100カ所ではなく、200カ所以上らしい。あのページ数で200カ所も修正したら原形をとどめていないだろう。修正内容が分からないので、内容に関係ないことを書く。

政治資金スキャンダルというのはいろいろあるが、どうも政敵(やマスコミ)が騒ぐために無理矢理ネタを出しているものが多い。すぐに鎮火するネタはたいていこれだと思う。

不正をするからには動機があるはずだ。動機を考えれば、誤記載が故意なのかミスなのかは予想できる。判断するためには対象となる書類について知っていないといけない。以下、書類を作る側から考察してみる。

本題に入る前に前提知識を少し書く。

●前提 政治資金収支報告書とは何か

多くの人が誤解していると思われるので書いておく。企業が収支を計算する目的は、法人税の計算をするためだろう。しかし、政治団体は課税されない。政治団体は公共的な存在なので優遇されている(税金がかからない、寄付金控除など)。優遇されている代わりに、収支を公開することが求められている。

そういうわけで、政治団体は政治資金収支報告書を選挙管理委員会に出す義務があるのだが、選管は形式的なチェックしかしない。足し算があっているかどうか、領収書が添付されているかといったことしか調べないのだ。収入や支出内容が法律に反しないかのチェックはしない。内容が間違っていても選管は収入になるわけでもないので困らないのだ。性善説で全てが作られている。

また、報告書に基づいて納税するわけでもない。選管からすると、黒字でも赤字でもどうでもいいのだ。それが証拠に収支報告書には、前年度からの繰越、今年の収入、今年の支出、来年への繰越と並ぶが、今年の利益という項目はない。そして、政治家本人にとっても黒字でも赤字でも大した問題ではない、税金はかからないのだから。

また、収支報告書に計上する収入というのは、政治団体の収入であって、本人の収入(議員としての給料など)とは別物だ。政治家がパーティーをしたり、支持者から貰った寄付金が収入で、それを何に使ったのかが支出だ。支出には、政治団体の事務所の費用、スタッフの人件費、ビラの印刷費、パーティーの開催費などがある。


ここから本題。

●不正と言うが、何がしたいか
収支報告書の不正行為は、「裏金作り」に集約されるはずだ。「個人の懐に入れる」「地元関係者に金を渡す」などいろいろあるように思うが、「表に出せない支出」と見れば同じことだ。(書いていい支出なら、そのまま書けばいいだけの話だ。)

●どうやって裏金を作るか
さて、裏金を作りたかったとして、収支報告書をどう書くだろうか。

・収入を減らす
貰った金をいわゆるヤミ献金にして、収入として計上しない。計上しなかった金はそのまま裏金になる。
(寄付は寄付金控除を受けるためには公開する必要があるのでハードルが高い、パーティー券は誰にもデメリットがなく簡単)

・架空支出を計上
経常経費や5万円以下の政治活動費として適当な金額を計上する。適当に計上した分が裏金になる。
(国会議員は請求されると全部公開する義務があるので、こちらは難しいが、人件費は個人情報になるために証拠が不要だ)


●私的な支出を政治団体に計上する意味
よくあるスキャンダルが、私的な支出を政治団体に計上する行為だが、私は基本的に相手にしていない。
上の考察から明らかなように無理に支出を増やす意味がないのだ。危険を冒して変な領収書を載せるモチベーションはない。もっと簡単な方法がいくらでもある。
この手のスキャンダルは公私混同(個人の財布と政治団体の財布がごちゃごちゃになっている※)を示唆するが、裏金作りとは無関係だ。この手のスキャンダルが大抵「収支報告書を修正します」で終わってしまうのはこれが原因だ※※(例外が舛添前都知事の「ホテル三日月」の件だがこれは別に考察する)。

下は舛添前都知事の政治団体の収支報告書。私的な支出を訂正して削除した例。1行目がホテル三日月。


よく大学教授などのコメンテーターが適当なコメントをしているが、彼らは実際に書類を書いたことがないとしか思えない。余談だが、一部は政治的意図を持っている活動家に近いと思う(対象者によってスタンスが全然違う)。

堺の竹山市長の件は上の「収入を減らす」のやり方が下手くそだったためにバレた、ということだ(と思う)。
上手に上の2つを組み合わせれば、年間1000万でもバレないようにできたはずだ。

※政治団体のスタッフ(≒秘書)が本人の代わりに買い物をしたり、飲食の支払いをすることはいくらでもあることは容易に想像できる。ごちゃごちゃになる要素はいくらでもあるのだろう。

※※公私混同はよくないのは当然だが、本質的な不正ではない