3日目の視察先は、東川町
東川町は、前々から関心を持っていた自治体なんですが、旭川空港のすぐそばに位置し、豊富に湧き出る地下水の恩恵を受け、北海道で唯一上水道のない町なんだそうです。
そして、道内には人口を大幅に減少させる自治体が多い中、人口は8,000人弱でほぼ横ばい(微増)を維持している数少ない町です。
また、吉良町出身の職員の方がいたり、前町長の氏名が同僚議員と同じ「山田たかお」だったりと(笑)、何かとご縁を感じる町でもありました
視察のテーマは、「ひがしかわ株主制度」についてです。
「ひがしかわ株主制度」とは、簡単に言ってしまえば、ふるさと納税の仕組みを利用した寄付制度なのですが、既定の税額控除以外に以下のような特徴があります。
株主証と特別町民認定書が送られます。
1年間に10,000円以上投資(寄付)すると、株主優待として5,000円程度の地元農産物などが贈呈されます。
オリンピック選手育成事業や自然散策路整備事業など、町があらかじめ用意したいくつかのプロジェクトの中から、投資をする金額の使い道を選択できます。
指定の宿泊施設に無料または半額で宿泊できます。
平成20年度から始まったこの制度の運用により、これまで2,000人強(延べ数ではなく実数)の方から7,000万円以上の投資があったそうです
※株主優待商品にかかった金額を引いても、6,000万円以上の投資額です。
国が決めた制度だから、(仕方なしに)運用だけしている自治体や、そこから一歩進んで、寄付してくれた方に地元の特産品を贈るという自治体が少なくない中、外からお金を呼び込むために非常によくできた制度だと思います。
僕も、帰宅後に申し込みの手続きをしました
※ネット上からも申し込みができます。
ひがしかわ株主制度と、ふるさと納税制度のさらなる詳細については、以下のサイトを参照してください。
http://town.higashikawa.hokkaido.jp/kabunushi/about.htm
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html
東川町では、株主制度以外にも、「新・婚姻届」や「写真甲子園」など、ユニークな取り組みがされています
婚姻届って、通常は提出すると手元に何も残りませんよね?
東川町の「新・婚姻届」は、婚姻届の他に、写しの付いた台紙や二人の写真を貼れるスペース、手紙などを入れられるポケットで構成されており、「結婚」という節目の思い出を形に残すことができる仕様になっています。
すごく粋な計らいだと思いませんか?
同様の作りの「新・出生届」もあるそうです。
また、「写真甲子園」というのは、町が「写真の町」宣言をしていることにちなんだ、高校生を対象にした写真のコンテストです
今から30年ほど前、全国的に一村一品運動がブームだった頃、一品に限定してしまうと一部の町民しか関われないため、全町民が関われる文化的なまちづくりを志向した結果、写真の町構想を実現していこうということになったんだそうです。
写真に関係する産業が盛んだったわけではなく、理由としては、日本一広大な大雪山国立公園があったことくらい…
しかし、先見の明があったんですね
写真の町構想を進めていくうちに、全国に人のネットワークが広がりそれが株主制度にも役立ち、住民のみなさんも自分の町を見つめ直すことで魅力を再発見でき、町の活力につながっているそうです。
僕は、説明いただいた副議長、副町長、職員の方の話を聞いていて、どうしてこれほど新しいことに積極的に取り組めるのだろうという疑問がわいてきました
実は、東川町では、市長の強いリーダーシップの下、
予算がない
前例がない
他の自治体でやっていない
という考え方はNGなんだそうです
ハード面については慎重に実施していく必要があるが、ソフト面についてはどんどんチャレンジしていく風土で、先ほど例に挙げた「新・婚姻届」も若手職員から提案があったものです。
ただし、ある程度の財源が必要な施策については、国や道からの補助金等の制度をしっかり勉強し、何が何でも外部からの財源を確保してくる覚悟でやるとのことです。
何か新しい提案があった時に、
できる理由を考える組織
できない理由を考える組織
良いパフォーマンスをあげられるのはどちらでしょうか
言うまでもなく、前者の方だと僕は思います。
気のせいかもしれませんが、視察の際に説明いただいた皆さんも、やる気と情熱にあふれた表情をしていたように感じます
行政組織は、その役割上、どうしても過度なリスク回避の傾向に走りがちですが、固定観念を打ち砕く素晴らしい自治体を視察でき、大変有意義でした
役場での説明終了後は、写真の展示会などが催されているギャラリーや、市街地の様子を見学させていただき、今回の視察の全日程を終了しました。