言志四録に学ぶ、「今を生きる」在り方 | ビジネス教養としての武士道〜和魂洋才・士魂商才の真髄に学ぶ

ビジネス教養としての武士道〜和魂洋才・士魂商才の真髄に学ぶ

世界のビジネスエリートを魅了する「教養としての武士道」著者が、武道武術・修身・リーダーシップなど、様々な面から武士道についてお伝えします。

心は現在なるを要す。(言志晩録一七五より抜粋)

大意:私たちの心は、今現在の時に、すべてを傾けなければならない。

今を生きる大切さを、これほどまでに、リズムよく簡潔に表現している一
文を、他には見たことがありません。

集中を要する場面で集中が切れそうになったら、必ず思い出したい一節で
す。

まだ見ぬ未来の困難を待ち受けて、心を奪われてはいけないし、
過ぎ去りし日々の後悔を背負い、心で追い続けてもいけない。
ただ今、現在に、心のすべてを注ぐべきなんだ。

佐藤一斎先生の、力強いメッセージが、心に響きます。

現代は、本当に便利な時代になってしまいました。

いつどんな時でも、スマートホンや携帯でネットにつながるし、知らない
ことを一瞬で知ることができる。
分からないことは、ダイレクトに携帯電話で話すことで、解決を図ること
ができる。

現代ではまだ解決できていないことと言えば、瞬間移動とタイムトラベル
くらいなのでは、と思ってしまうことがあります。(言い過ぎかもしれま
せん。)

そのくらい便利さが極まった世の中では、同時進行でいくつもの事柄を進
めることが当たり前であり、それがスピードを生み出すと信じられていま
す。

しかし、人間は太古の昔、人間と言う動物に進化して以降、劇的な進化は
していないのだとすると、心がかつてないほどのスピード感や同時進行に
耐えられるようにできているとは、到底思えないのです。
努力によって、物事に早く対応できるようになることは、もちろん大切で
す。

ただひとつ申し上げたいのは、そういう大切な努力をし続けることと同じ
くらい、「一時にひとつのことだけしかしない。」という心の持ちようも
大切なのではないか、そういう在り方も大切なのではないか、ということ
です。

心の疲弊を防ぎ、心の精度をあげ、心の感度を研ぎ澄ます。

そういう方法があるとすれば、心を現在なる状況に保つ修練しか、ないの
だと思うのです。

時代に逆行することなのかもしれません。
それでも、失ってはいけない、大切なことのような気がしてなりません。