月下美人4
「あっふ…」
「なに?欠伸?眠くなったの?」
「え?ああ、ごめん。なんかアイビーの声聞いてたら眠くなってきちゃった」
「どういう意味⁇私、自分ばっかり喋り過ぎた?退屈しちゃった?」
「ハハハ。違う、違う」
「じゃ、なんで私の声で眠くなるのよ」
「なんでだろうな。たぶん…安心したからじゃない?」
ドキッ!
そういうとこ!健ちゃんのそういうとこだよ。この、人たらし!
「あっふ…」
また欠伸してる。手の甲を口に当てて眠そうにしてる健ちゃんが目に浮かんだ。
「ふふ…」
「なに?」
「ふふふ…別に」
「なんだよ。何笑ってんだよぉ」
「だって健ちゃん、眠そうで…ふふ…」
「えー?何?何が面白いんだって」
健ちゃんの笑いを含んだ声が、耳に心地いい。
恋人でもない私に、こんなふうにリラックスして戯れ合うように喋ってくれる。それが、なんだかくすぐったい。
やっぱ彼女いないのかなぁ。もし彼女がいたら、ちょっと嫉妬案件だよね。こんな時間に彼女じゃない女の人と電話してるなんて。
「じゃあ、もう寝よっか。アイビー」
「うん。寝よう。明日仕事は?」
「あるんだよそれが」
「え?やばいじゃん!」
「いや、やぁばいんだよホントに。でも今からだと2時間くらいは寝れるな」
「じゃ、寝よ寝よ」
「うん。じゃあね、アイビー。ありがとう」
「うん。こっちもありがとう」
「俺は何もしてないけど」
「健ちゃんと話せて楽しかったから」
「俺もだよ。アイビー」