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健ちゃんは私の首筋に鼻を埋めて、
「ゆかりの方が…いい匂いがするよ」
と言って、スカートをたくし上げた。
「待って。ここ…リビング…だよ?」
「だから?」
と不敵に笑って髪をかき上げる。
「ベ、ベッド行こう?」
「リビングじゃダメ?たまにはいいじゃん」
「ダメだよ」
「真面目だな」
「リビングでなんて…なんか…エッチだよ///」
すると健ちゃんは眉尻を下げて呆れたように言った。
「エッチなことすんじゃねーかよ」
「そ、そうだけど、やらしいよ。なんか」
「やらしいんだよ。君のダンナは」
「やらしくないよ」
「やらしいんだって」
「健ちゃんはやらしくないもん!」
「やらしいの!」
健ちゃんはちょっと怒ったような顔して、私にまたがって膝立ちになっている。
な、なんかこんな言い合い、変じゃない?
健ちゃんは目を細めて、
「さんざっぱらやらしいことしてきて、やらしくないわけないでしょうが。ゆかりが一番知ってるでしょ?俺がスケベだってこと」
と言った。
「うぐ…っ」
「はい、質問です。君のダンナはやらしいですか、そうじゃないですか」
「や、やらしいです」
「はい、じゃ、やらしいダンナは好きですか、嫌いですか」
「き、嫌いじゃないです」
「じゃ、今すぐ妻を、ここで、リビングで、抱きたい夫を受け入れてくれますか」
「イヤです」
「コノヤロウ」
健ちゃんはお仕置きとばかり噛みつくようなキスをした。
「ンン…ッ!…け…んちゃ…んっ…」
ドキドキして、息苦しくて、体が熱くなって…
もうこのままリビングで抱かれてしまってもいい…かも…。
そう思いかけたときだった。
健ちゃんは不意にキスをやめた。
「……?」
そして、いよっと私を抱き上げ、ソファから立ち上がった。
「ベッド行くよ?ベッドならいいんでしょ?」
と私を見下ろす。
「あ…う、うん」
リビングで抱きたいと言ってあんな激しいキスをして…こっちは流されてしまいそうになっていたのに…。