結婚なんてしないで 23 怖がらないで | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

23


「嘘って?」



「用事があるってのは嘘。用事なんかなかった」



「じゃあ、彼女に会ってたのは?」



「あれは、突発事情」



俺は、早瀬から連絡が来て学校に行き、ついでにラーメンを食べて自宅まで送った事実を話した。


もちろん、早瀬がちょっと見せた感情や、俺が桜を待たせてるなんて嘘をついたことまでは話さなかった。



桜は落ち着いて俺の話を聞いていたから、俺が早瀬を手伝ったことや車で送ったことに対しては、特に怒ってはいないようだった。



結局、髪に触れさせたことも、とっさのことだったから仕方ないと思ってくれた。



今や桜にとっては、俺がどうして用事があるって嘘をついたか、そこが一番の問題になっていた。


俺は正直に言った。



「ちょっと、距離を置きたかったんだ」



案の定、桜は眉を曇らせた。



「誤解しないで欲しいんだけど、最近けっこうべったりだったし、なんかお前もちょっと



「重たくなったってこと?」



「違う。そうじゃない。お前は全然悪くない。俺の問題」



「少し、ひとりになりたかったとかそういうこと?」



「まあそんなとこ」



「だったら、そう言ってくれればよかったのに」



「うん。でも、言いにくいじゃん。そんなの」



「言ってるじゃない。今」



「そうだな



しばらく、沈黙があった。



「なんか俺、熱くなり過ぎそうだったから



「ダンスに?」



出た。天然。



俺は無邪気に首を傾げる桜を見た。




お前に」




……///



桜はパッと顔を赤らめると、俯いて、髪を耳にかけた。



「な、なにそれ///



「ちょっと、冷ました方がいいと思って



しばらく俯いていた桜は、



「そんなこと、どうして思うの?」



と、顔を上げて、まっすぐに俺を見つめた。



ああその熱量。一途な瞳。


俺が千帆と暮らしてるときでさえ、偶然出会うと、桜はこの目で俺を射抜いた。


桜は俺を愛することを、迷わない。躊躇わない。


いつも、まっすぐな愛を俺に向ける。



「熱くなり過ぎちゃダメなの?」



「だって



「だって?」



「火傷しちゃう



と言いかけた俺の唇を、桜はキスで塞いだ。



俺の頬を両手で挟んで、ちゅっと俺の唇を吸って



「そんなの怖くないもん」



と言ってまた唇を重ねた。



「怖くないよ条くん」



桜は慈愛に満ちた目で俺を見つめ、まるで母親のように俺の頬を撫で、それから髪を撫でた。



「だから、条くんも



指先で俺の唇に触れ、視線を上げる。



桜の熱くまっすぐな瞳には愛が溢れている。




怖がらないで」




桜」




「愛し過ぎたって、条くんに奪えるのは、私の心と体だけだよ」



私の命までは奪えない。



桜は暗にそう言いたかったのか



「桜




たまらなかった。



火傷しちゃうなんて誤魔化して、ほんとは愛し過ぎることの何が怖いか、俺が何を恐れているか。こいつには、わかってる。



佐倉を亡くし、千帆を亡くした俺がほんとは何を恐れているか



俺は、たまらず、俺の唇に触れている桜の手をどけて、唇を重ねた。