催花雨 1 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※何も手につかなかったこの週末。実は、まだ泣いてない。色々解散について考えることで、寂しさと向き合うことを避けてました。そして、やっぱり、まだ逃避する。こんな形で。







1




正門の楠が春の嵐になぶられている。



傘をさした生徒や保護者たちがパラパラと正門から出て行く。



条件部屋の窓を雨が伝って流れ落ちる。




「コーヒー入ったよ」



宝の声に振り向いた。



白い琺瑯のケトルを置く宝の逞しい背中。白いシャツに光沢のあるグレーのベスト。



今日は体育館で吹奏楽部のミニコンサートが催された。このご時世だから、午前と午後の二部に分かれ、観客を入れ替えての実施。




午後の部を終え、反省会を済ませたコンダクター宝は条件部屋でコーヒーを淹れていた。



(こんなときぐらいお疲れ様って俺か条が淹れてやれって?いやいや、コーヒーを淹れる行為じたいが宝にとっては癒しなんだって。だから俺たちは黙って宝の淹れたコーヒーを頂戴する)




俺は宝のそばに行った。




「おつかれさん」



宝の綺麗な横顔に向かって言う。



鼻筋の通った鼻。長い睫毛。



ベストよりワントーン濃いめのグレーのネクタイ。



紳士だ。整っている。



俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、宝に向ける。



宝がチラッと横目で俺を見る。



「なぁんで撮るの?」



目尻に笑い皺が寄って、宝の手がレンズを遮る。



「紳士だから」



「いいから」



俺はレンズを遮る宝の手を掴む。自然、手を繋いだ形になった。宝の片手はカップを持ち、俺の片手はスマホを持っている。



カシャッ。



照れ笑いしてレンズを甘く睨む宝の顔。



うん。満足。



澄ました横顔もいいけど、こんな甘い顔もいい。



ニヤけてたら、



「何をいちゃついてんだお前ら」



ってソファに寝転がったまま条が言った。