ご無沙汰です。クリア、リピしてます。曲がすごく好き。しかも、前半カミセン。
剛健の甘い
♪僕は生まれ変わ〜〜〜…
から、准ちゃんの、
♪変われるのさ
っていうところがね、なんとも萌えます。
まるで、お兄ちゃんの優しい後押しがあって、末っ子が強く「自分は変われる」って思い込もうとしているというか、変わるんだって決意しているというか、そんな感じがして。
弱さもあって、揺らぎも、後悔も、色々あって、自分自身を見失ったり、自分の進むべき道がわからなくなったりしたときに、何を道標にするかというと、君の瞳に映る僕。
弱ってるイケメンに頼りにされるぐらいキュンとくるものはない!と、思いませんか?
さて、お話はどんな方向に進むかわかりませんが、健ちゃん先生シリーズ最新作、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
1
「条が、女と逃げてる」
健くんの言葉に、俺はコーヒーを吹き出しそうになった。
コーヒーカップをテーブルに置いて、窓辺に佇んでいる健くんの後ろ姿を見上げる。
「今、なんて?」
「ほらほら」
健くんは窓の外を指差して、俺を手招きした。
俺はソファから立ち上がって、健くんと並んで窓の外を見た。
「たしかに」
条くんが、女の人の手を引いてバス通りの歩道を走っている。グレンチェックのコートに黒のパンツを穿き、白いマフラーをなびかせている。最近髪を短くしたせいで、余計顔が小さく見える。
女の人はトレンチコートに黒のパンツとバッグ。肩までの茶色い髪。条くんより小柄だ。
条くんは、走りながら後ろを振り向いたかと思うと、サッと素早く次の角を曲がり、遠心力で大回りしそうになった女の人を自分の方へグッと引き寄せた。女の人はよろめいて、条くんの影に重なり、物陰に消えた。
角を、追いかけて来た男が通り過ぎた。立ち止まってキョロキョロし、悪態をついて、やがて引き返して行った。
条くんと女の人が物陰から姿を表した。通りを覗き、男がいないことを確認すると、出てきて並んで歩き出した。もう手は繋いでいない。
「おいおい、まさかの同伴出勤かよ条先生」
「朝からやるねぇ」
俺は腕組みして、ニヤついた。
「つか、もう2時間目。女連れの重役出勤とは、偉くなったもんだな教務部長」
「ところで誰?あの女性」
「さあ。うちの教員じゃねぇな」
俺たちは揃って首を捻り、校門をくぐる条くんと女性を見た。
やがて、条件部屋のドアが開いて、条くんが入って来た。
「おはよう」
「おはよ」
条くんは、素っ気なく言って、ロッカーを開け、マフラーを取った。
健くんの分析によると、条くんは一晩経つと人見知りが発動するのだそうだ。
朝の挨拶のとき、あまり俺たちと目を合わせないのは、照れ臭いからだと言う。
本人に確認したことはないけど、だとしたら、そんな条くんが愛しい。
条くんがコートを脱ぎかけると、健くんが、
「ちょっと待って」
と言って条くんのコートに鼻を近づけた。
「くんくんくん」
「なぁんだよ!お前!朝っぱらから。犬か!」
「女の匂いがするぞ。条」
「は?しねーよ!」
「浮気したな」
「してねーよ!したとしても、お前には関係ねーだろ!」
「あ!したんだ!」
「してねーって!」
「じゃ、なんで今日遅れて来たんだよ」
「時間休取ってるよちゃんと」
「だからなんでだよ?」
「は?休みの理由を言う義務はねーだろ」
「お前が言う義務はないが、俺には知る権利がある」
「ないだろ!」
条くんは面倒臭そうに健くんから目を逸らして、俺を見た。
「宝、コーヒー残ってる?」
「あるよ」
俺は棚から条くんのカップを取ってコーヒーを注いだ。
条くんは健くんを無視してソファに座り、ジャケットのボタンを外した。
「あ。条、ネクタイは?」
健くんは条くんの後ろから肩を揉んで条くんの顔を覗き込んだ。
「ああ…」
条くんはシャツの襟に手をやって、
「忘れたなぁ」
と言った。
「彼女の部屋に忘れて来ちゃった?」
健くんは肩を揉みながらニヤニヤした。
条くんは目を閉じて上を向き、
「ああ」
と肯定した。
それから腰に手を当て、
「ああ…腰がいてぇ…」
と顔をしかめた。
俺と健くんは思わず顔を見合わせた。