離れていても 40 井ノ原校長のライブ配信 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


俺と聡美は一緒に校長のライブ配信を見た。



校長はいつになく神妙な顔をしていた。挨拶の後、本題に入った。



「該当する本校教職員についてインターネット上で取り上げられたような事実は、一切ございません。また、不要不急の外出もしておりません。校長として、責任を持って断言致します。


また、本校関係者の感染の有無については、感染拡大防止の観点から必要と認められる場合にのみ、情報を公開致します」




「井ノ原校長って、こんな真面目な顔できるのね



「当たり前だろ。この人真剣になったら怖いんだぜ」




「さて、みなさん。どのような場合にも、最優先して守られるべきは、人の命です。


憶測や推測で、いたずらに人の名誉や心を傷つけることは、その人の命を奪うことにも繋がりかねません。


また、誰かに向けられた誹謗中傷が、それを目にした人を不快にし、不安を抱かせ、健康な生活を奪ってしまうことだって、あるかもしれない。


休校中、どうしてもSNSに触れる機会が増えると思いますが、生徒のみなさんには、想像力と思いやりをもって、どうか正しくSNSを使って欲しいと思います。



それから



井ノ原校長は、ひとつ咳払いをすると、



「君の先生のことを知らない誰かの言うことなんて、気にしなくていい!」



と手をブン!と顔の前で払った。



「そんな誰かの言葉を信じて、あなたの先生を疑ったり不安になったりしちゃダメだよ?」



カメラに向かって指を差す。



「あなたの知ってるあなたの先生を信じてください。


あなたが見たまんまです!あなたが感じたまんまです!


それが、あなたの先生です」



両手を膝に置いて、ニコッと笑う。



「どうですか?なかなか会えないけど、思い出してくれたかな?みんなの大好きな先生は、休校中も頑張ってるよ!みんなに謝ったり弁明したりしなきゃいけないようなことは、何ひとつしてない」



力強く、温かい校長の言葉に、俺自身が励まされた。聡美はそっと俺の腕を取って寄り添った。



「だからね、何も話さなくていいよって私が言いました。みんなは先生のライブ配信見たかったかもしれないけどまあ、今回は私で我慢してください。ね?」



その後、保護者向けに真面目な挨拶をして、ライブ配信は終了した。



「なんかいいわねぇ校長」



「うん」



「頼りがいのあるボスじゃない。名誉毀損で訴えるなら、荒木先生紹介するって校長に言っといて」



「フッ。こっちも頼りがいのある彼女だな」



「下劣な奴は許せないのよ」



「下劣な奴は悪知恵が働く。だから正攻法が効かないときだってある」



「じゃ、どう攻めるの?目には目を?あなたにたいした悪巧みができるとは思えない」



俺はちょっと考えてから、片眉を上げた。



「それ、褒め言葉?」



「もちろん」



「そっか。バカにされてんのかと思った」



「勘違い。ねぇ、どうするの?」



「放っておく」



「放っておく⁇」



「騒ぎを大きくしない方がいい。沙耶や聡美にまで火の粉が飛んだらどうする?」



「私だけなら『かまわないわ』って言いたいところだけど



「そうもいかないだろ?下手すりゃ真由美友まで



「そうねでも悔しい」



「大丈夫。生徒は俺を信じてくれる」



「自信があるのね」



「そこだけは」



「そこだけ?」



「一番大事なところだ」