GUILTY 64 追手 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


岬は再生されたDVDを見て、愕然とした。


画面では、今の三宅の面影を残した少年が「健ちゃん」と呼ばれ、大人の男たちに追いかけ回されていた。



『少年狩り』というおぞましいタイトルの少年とは、幼い頃の三宅だったのだ。



幼い三宅が必死に逃げて追い詰められていく様を、岬は見ていられなかった。捕まった後に、されることはもっと恐ろしいことに違いなかった。


岬は震える手で、停止ボタンを押した。



動悸が激しい。自然に涙が流れた。



「健ちゃんっ!」



今すぐこの手に三宅を抱きしめたかった。三宅少年が味わった恐怖を思うと胸が締め付けられるように痛かった。



と、その時、ピンポンとドアホンが鳴った。


岬は走り出して、確かめもせず玄関のドアを開けた。



「健ちゃん!」



が、目の前に立っていたのは、雨でずぶ濡れになった岡田だった。



「お岡田さんどうして?」



「その様子じゃ、まだ戻ってないようだな」



岡田は上目遣いで岬を見て、雨に濡れた顔を片手で拭った。雨の滴がポタポタ落ちる。



岬がポカンとしていると、岡田の後ろから、井ノ原がひょこっと顔を覗かせた。



「あ。すみません。突然。こういう者です」



「あはぁ



「あの、三宅さんがですね



井ノ原は体を引いて、外の表札を確認した。表札に名前はなかった。



「えっと三宅さんの家であってますよね?」



「は、はぁ。あの、三宅に何か?」



「いや、実は先程喧嘩をしてるところをたまたま目撃しましてね



「け、健ちゃんが、喧嘩?」



「はい。追っかけたんですけど、見失っちゃって。いや、相手の方が怪我されてるのでね、ちょっと事情をお伺いしたいと思いまして」



「あす、すみません。えっと



「もし、戻って来られたら、こちらに連絡頂けませんかね?」



井ノ原は名刺を取り出し、岬に渡した。



「はあ。あの、相手の方の怪我は?」



「ああ今ね、病院行ってます」



「ひどいんですか?」



「今はなんとも言えませんが」



「あのそれで、三宅は、逃げたってことでしょうか?」



「はい」



「ちょ、ちょっと待って下さい。今連絡取ってみます」



「あ、そうして頂けますか?」



岬が電話をかけようとすると、



「あの…申し訳ないんですがね、我々を見て逃げ出したってことですから、あなたが『家に警察が来てる』って言えば、三宅さん、帰って来ないかもしれませんので、そのことは内緒で」



と井ノ原は人差し指を口に当てた。



「は…はぁ」



岬は電話をかけた。が、三宅は出ない。



「電波が繋がらないところにいるって…」



「そうですか」



井ノ原と岡田は顔を見合わせた。



「あ、あの…でも多分ここに帰っては来ると思いますので…よかったら、あの…上がって下さい。三宅に何があったかもう少し詳しく教えてもらえませんか?」



岡田は振り向いて、井ノ原を見た。



「主任。先に行ってて下さい。ここは俺が…」



岬は不安だった。ただの喧嘩ではないような気がする。


三宅を追って来た森田。持っていないと言っていた顧客リスト。それに、あのDVD…。三宅は、きっと何か大きな事件に巻き込まれているに違いない。


岡田が大阪まで来ていることが何よりも事の重大さを物語っている。




「じゃ、任せた」



井ノ原は、「すみませんねぇ」と岬に笑いかけた。



それから「お前、部屋濡らすなよ」とハンカチで岡田のスーツを拭きながら鋭い顔をして、岬に聞こえないように小声で、



「絶対に目を離すな」



と耳打ちした。