Sky's The Limit 64 航空祭 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

*本日2話目の更新ですニコニコ






お人好しで、セックスが好きで、余計な詮索をしないリンとの付き合いは、気楽でよかった。

燦の時のように胸を焦がすような熱い思いは湧き上がらないが、それは歳のせいかもしれないし、返って熱くなりすぎないライトな付き合いが、今の俺には合っていた。



「ねぇ…明日あたしが帰っちゃったら寂しい?」


リンが寝返りをうって、俺の顔を覗き込んだ。


「ああ」


「ソラくんのママが来ても?」


「当たり前だろ」


「あたしがいなくなっちゃうと困る?」


「そうだね。美味いもんにありつけなくなるし」


「ウフフ」


「セックスの相手もいなくなる」


「アハハ」


半分ほんとなんだけど、リンは怒ったりせず、面白そうに笑った。


「ねぇ、美味しいお店、いくつかピックアップしといてあげる」



「気が利くね」



「セックスの相手は自分で調達して」



「了解」



「了解じゃないわよ!」



リンが笑いながらパシッと俺の肩を叩いた。






翌朝、3人で航空祭に出かけた。


午前中は、カダール軍による最新型戦闘機のアクロバットショーを見た。ソラとリンは終始大興奮していた。


久しぶりに見る戦闘機の飛行と、体を震わせるような轟音。青空に、スモークが白やピンクのラインを描く。


俺は、見上げながら、知らず知らず右手に力を入れ、指を動かしていた。操縦桿の感触を思い出していたんだ。


午後になった。


アナの乗った飛行機がもうすぐ到着する。リンには、鉢合わせしたって構わないと言ったが、アナはいい気はしないだろう。


「ちょっと面倒だな…」


「何が?」


ソラが俺を見上げていた。



「あ、いや…。ソラ、神戦見に行くか?」


「後にするよ。さっき行列できてたもん。もうちょっと空いてから。それにもうすぐ日本のアクロバット始まるよ?」



「そっか…」


カダール軍のアクロバットショーを見ると、神戦を操縦したくて、たまらなくなった。


コックピットに乗るだけでも、乗ってみてーな…

とか、子供みたいかな。




「…剛、懐かしい?」



「え?」


ドキッとした。


「なんか、ちょっと興奮してない?」



「そ、そうかな」



「古巣だもんね。カダール空軍」



「…ああ」



そうか。リンは、俺がカダール空軍の戦闘機乗りだった時のことを懐かしんでると思ってるんだ。


カダール空軍で過ごした10年間の思い出は、特にない。当然、実戦はなかったし、仕事よりソラに夢中だった。


「…あんなのに乗って、戦ってたのね」



リンがしみじみと呟いた。


「剛が生きてて…よかった」



俺を見つめるリンの黒い瞳。

ふと、それが、燦の瞳と重なった。


墜落していく神戦のコックピットの中で、じっと俺を見つめた燦の瞳。


俺は目を閉じて、眉間を抑えた。


もしも、あの時、カダールにミサイルを落としていたら…

リンも今、こうして生きていたかどうかわからない。



『私たち、これから、ミサイルを海に落として、たくさんの人の命を救うんだから』



『燦を信じて、正解だったんだよ』


健がくれた言葉。
健がくれた燦の卵子…。



目を開けると、リンが少し心配そうに俺を見ていた。

ソラは、目を輝かせて戦闘機を見つめている。


「うん…。生きてて、よかった」



今なら、俺もそう思えるよ。


今の気持ちを、誰に伝えたいかと言えば…


『またいつか…一緒に飛ぼうな。剛』





あいつ…元気にしてるかな。