触れたくて エピローグ | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

4月になって、入学式の日を迎えた。


条件部屋で俺がコーヒーを飲んでいると、条くんが鏡に向かって身だしなみを整え始めた。


俺は壁にかかった時計を見た。そろそろ式が始まる。


条くんはちょっと顎を上げてネクタイを締め、今度は顎を引いてネクタイピンを調整した。


そんな何げない仕草に色気を感じる…

とか思って見てたら、袴姿の健くんが条くんのそばに来て、ポンと肩に両手を置いた。


条くんの肩を揉むようにして、


「カッコいいじゃん。新しいスーツ?」


って後ろから顔を覗き込む。


「ああ」


「あ!ネクタイピンも新しいじゃん。これ見たことない!」


って指を指した。


「健くん、よく見てるね〜。条くんのことは」


俺は条くんがどんなネクタイピン持ってるかとか、全然知らない。


「いや、別によく見てるわけじゃないけどさ。綺麗じゃん。ルビー?」


「硝子だよ」


「なんだ硝子かぁ。どうしたの?」



「え?」



「買ったの?もらったの?」



「いいだろ。どっちでも」


条くんはジャケットの襟を正した。


「もらったんだ」


健くんがニヤニヤする。


「新学期が始まるこの入学式に、気合い入れて新しいスーツに合わせてわざわざ…。そうか!おまえ、ひょっとしてさ、それ…上野さんにもらったの?」


健くんが目を輝かせて、


「え?ひょっとして、より戻ったの?」


って条くんの肩を抱いた。



え?


俺は思わず条くんを見た。


条くんが上野さんとよりを戻したのは、一週間前の花見の日で…俺は聡美経由で知って条くんとも少し話したけど…



まだ健くんに言ってなかったの?



「…ああ」


条くんは俯いてボソッと言った。



「フゥ〜ッ♡宝、条、より戻したんだってさ!」



「あ…ああ、そうなんだ」


「そうなんだってお前知ってるじゃん」


わ!条くん、それ言っちゃダメだろ!


「え?宝、知ってんの⁇なんで⁇」


「宝と話したもん」


だから、条くん!健くんが嫉妬するから。


「なんだよお前ら!なんで俺には言ってくんないんだよ!」


「だってなんかめんどくさそうだから」


「は⁈」


「いやいや、健くん、俺もね?最初は上野さんから聞いて知ったの。それで条くんにね?」


「なんで上野さんが宝に言うんだよ⁇」


「あ、違う。上野さんが聡美に言って、それを俺が聡美から聞いて…」


「俺だけ知らなかったの⁇なんだよそれ〜。いついつ?いつより戻ったんだよ!きっかけは?」


「こないだの花見だよ。同窓会館の。ね?条くん」


「それ俺がセッティングしたやつじゃねーかよっ!」



あ。そうだった。


「こうなることはわかってたんだよ。俺は。グズグズしてっから忙しい教務部長のために学校で花見セッティングしてやってさ…。なのに俺に報告ないってどういうことだよ?宝!」


「俺かいっ!」


条くんは俺たちを見て笑っている。


「俺は…てっきりもう条くんが健くんに言ってるもんだと」


「条!」


「ギャーギャーうるせんだよ。いちいち言わないでしょそんなこと。普通。付き合いました、別れました、より戻しましたっていちいち言う?」


「ま、たしかに言わないよね。普通」


俺は腕を組んで、条くんと笑い合った。


「まてまて!何分かり合ってんだ。おまえら!…いや、普通は言わないかもしれないけど、今回は言えよって話だろ。条!」


「はいはい」


条くんは笑いながら片手をポケットに突っ込んで、ドアノブに手をかけた。


「そろそろ入学式始まるぞ」


振り向きざまにそう言う条くんがカッコいい。



条くんが出て行った後で、健くんは腕組みしてひとりうんうん頷いた。


「たしかに…女のいる顔してるな」


俺の方に肩を寄せて、


「宝、今晩三人でバー行くぞ。よりが戻った経緯を根掘り葉掘り聞き出してやる」


と言ってニヤリと笑った。


だから条くんにめんどくさいって言われるんだよ…って言葉は飲み込んで、俺は、


「了解」


と言ってドアに向かった。


「あ!ちょっと待って。条はお前が誘えよ。俺が誘ったらめんどくさいって来ないかもしれないから」


「わかってんじゃん」


「当たり前だろ。何年付き合ってると思ってんだよ」


「それでも、聞きたいんだね。好きだねぇ〜ほんとに条くんのこと」


「うるせーっ」


はは。可愛い。


条くんってほんとモテモテだな。

…まあ、俺も大好きだけど。


とか言ってるうちに式の時間が迫っていた。


「あ、時間」


「あ、やばいやばい。条、待って!」


俺たちはドアを開けると、バタバタと、廊下の先を歩く条くんの背中を追いかけた。





fin.




*条のネクタイピンにピンと来なかった方はこちらのエピソードですよウインク