「当分、女はいいよ」
と条くんが言うと、健くんがパシッと条くんの足を叩いた。
すると、ガバッと条くんが起き上がった。
「なに⁇」
「え?だってお前が女っ気なしとかさぁ…」
「え?その話、誰から聞いたの?」
「どの話?」
「だから、エロおやじって誰が言ってたの?」
「今、俺が言ったの」
「なんだ」
「え?何?なんか思い当たることあんの?」
「なにが?」
「だからエロおやじって誰かに言われたの?」
「言われてないよ。言われてない」
「誰かに言われたんだろ?」
「言われてないよ。誰が言うんだよ」
「桃ちゃんとか」
健くんがニヤニヤして言うと、条くんが、
「お前は…っ…」
って健くんから離れてソファの端に寄った。
「こいつ…ほんっとなんなの?」
条くんが俺に目配せする。
たしかに、娘みたいな桃ちゃんに、条くんがエロおやじって言われるって…どんなシチュエーションだよ。
俺はふふっと笑って健くんを見た。
健くんはへらへらしてる。
「言われてない。絶対言われてない。言われたことない」
「否定し過ぎだろ。余計怪しいじゃん」
「うるさいよ」
「あ!上野さんに言われたの?」
健くんが目をクリッとさせて条くんを指差した。
「なんで⁇」
条くんの声がひっくり返った。肘掛けにしがみつくようにして膝を揃えて、さらに健くんを避けて端に寄る。
「なんで上野が出てくんの?だから女は当分いいって言ってんでしょ!」
「そういうわけにはいかないんだよ!」
「なんでだよっ⁈」
「こっちにも色々あんだよ!」
「色々ってなんだよ!」
「仲良くしろよ!」